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第382話 お返しの意味
放課後。
斗織を待って、席で足をプラプラさせてると。
「紫藤ちゃ~ん」
安定のチャラボイス、山田くんに教卓越しに声を掛けられた。
「ホワイトデーなのにひとりなの?」
「ううん。斗織に用事があるから待ってるだけ」
山田くんは今日日直だったみたい。(1日中授業の号令も掛けていたが、斗織以外に興味が無いため遼司は気付いていなかったそうな)
黒板の3月14日(月)を消して、明日の日付に直してる。
「今頃、他の子にホワイトデーのお返ししてたりして~?」
「しないよ。誰からもチョコ受け取ってないし、斗織は俺が悲しむことしないもん」
「あら~、愛されてんねぇ、羽崎」
「うん。斗織も俺のことメチャメチャ愛してくれてるけどね」
ニコってしてからウインクすると、山田くんは「悩殺っ」とかなんとか言いながら床に崩れ落ちた。
この手の変なテンションはいつもの面子の中では無いから、新鮮でちょっと楽しい。
「そういう山田くんは、誰かにお返し渡したの?」
「俺はねぇ、…色々あんだよねぇ。マユちゃんはピアス、すずちゃんは新作リップでしょー?ゴディバだのハーゲンダッツだの、みんなに間違わずに渡さなきゃだから、もう大変!」
ああ……、友チョコ三倍返しの人だ…。
お気の毒に。
まあ、本人楽しそうだからいいのかな?
「その憐れむような目っ!恋人居る子はこれだからもう!」
目敏く見抜かれて怒られた。
「あ、お返しって言えばさ、あげるもので好き、嫌い、友達って意味があんの知ってた?」
「ううん、知らない。流石チャ…山田くん」
「いや今チャラ男って言いかけたよね!どうせ言うなら最後まで口にしてね、別にチャラ男って悪口じゃないからね?!」
ふ~ん、チャラ男って悪口じゃなかったんだ……。
フムフムと頷いて納得してると、山田くんは複雑な心情を顔に浮かべて「まあそれはいいや」と、諦めたように首を横に振った。
「でさ、代表的なのが、マシュマロが嫌い、飴ちゃんが好き、クッキーが友達ってヤツで」
「へぇ…。俺、お姉ちゃんにお礼にクッキー焼いちゃった」
「お姉ちゃんならい~んじゃないの?」
「うん。んじゃ、斗織からはキャンディー貰うのが正解?」
「いんや、そこはマカロンでしょ!」
「マカロン…?」
新たなワードが登場。
マカロンねぇ。美味しいよね。作るの難しそうだけど。
俺、中学の時1回作ろうと思って、材料に『乾燥卵白』って書いてあるの見た瞬間訳分かんなくなって諦めた覚えがある。
「マカロンの意味は特別。君たちにピッタリっしょ~?」
『特別』か……。
確かに!
「でもさぁ、山田くん。君は斗織がそんなオシャンティなことを知っていると思うのかい?」
「女子力ハイレベルの紫藤ちゃんも知らなかったくらいだしね~」
「斗織が知ってたら逆に驚きじゃない?」
「ドコの女から聞いたのよ!?ってね~」
「斗織は浮気する人じゃないから、その辺は心配していません」
「え~?そーゆー反応~?」
多分、そう云う情報を入手するとしたら、情報源は多分、級長かお姉ちゃん。もしかしたら芽衣さん。大穴でマナちゃん先生ってトコだろう。
つまんないーっ、て唇尖らせてる山田くんから視線を外して、机の上でブルったスマホを確認する。
『お姉ちゃんへのお返しは手作りのお弁当で♡(❃ӦωӦ)ノヨロシク~』
Limeメッセはお姉ちゃんからで、ホワイトデーのお返しのリクエストらしい。
『いつ渡せばいいの?』
『春休み入ったら、斗織君と職場に遊びにおいで(*/>∀<)/』
『了解しました。
じゃあ、お姉ちゃんのために焼いたチョコチャンククッキーとアイシングクッキーといちごクッキー…その他諸々は俺が食べちゃうね。』
『えっ!?(´oωo`)
ダメーーーッ!!!
私の遼ちゃんクッキー食べちゃダメーーーーッッ!!!!』
………なんか、スゴいの送られてきた。
『遼ちゃんがそのつもりなら、私だって!
遼ちゃんが斗織君から貰ったお返し食べてやる~~(///)'ч'(///)ムシャムシャ』
「っ───!!!」
『お姉ちゃんキライ!!』
『あ~ん、。゚(゚´pωq`)゚。
ウソよーっ。゚(゚´Д`゚)゚。
遼ちゃんに嫌われたらお姉ちゃん死んじゃう!o((;>口<;))o』
「…………」
よし!放置。
まだブルってるスマホは気にしないことにしてカバンに突っ込んで。
「遼、おまたせ」
斗織も戻って来たことだし、山田くんにバイバイして、荷物を持って席を立つ。
斗織は既に鞄を手にしてた。
「帰るか」
「うんっ」
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