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第383話 お返しは
「お返し。今食うか?」
家へ着いて諸々済ませて落ち着いた頃、斗織が何気なさを装いつつプレゼントボックスを差し出してきた。
でも、遼ちゃんは気付いてます。それを俺にいつ渡そうかとそわそわしちゃってたこと。
「うんっ」
「…花飛んでる」
いつから俺の気持ちは可視化出来るようになったのか。
そんなこと言ってからかう斗織から包みを受け取り、うきうきしながら包装紙を開く。
中身はなんだろう?
アメかな?
全然関係ないお菓子かも。フィナンシェとか?
パステルカラーの可愛い箱。
フタをパカッて開けると……
「ふわわっ」
「……どうした?」
フタを持ったまんま固まっちゃった俺に、斗織が不思議そうに声を掛けてきた。
「もしかして嫌いなもんだったか…?」
少し、不安げな声。
慌てて首を横に振った。
「ううんっ!大好き斗織っ!!」
「いや、俺じゃなくて……それ」
「嬉しすぎて固まった!」
「……そっか。ならよかった」
ホッとしたように口元を弛める斗織に、俺も笑顔が溢れちゃう。
だって、だってさ!
斗織からさ、まさかのマカロン!もらえるなんて!!思わないじゃんっ!
知ってたの?それとも偶然?
どっちにしたって嬉しい!
知ってて贈ってくれたなら、俺が特別だよって形で示してくれたってことだし、知らなくて選んだならそれは偶然じゃなくて運命、みたいなさ!
中身は3色が2つずつ。
一緒に食べること考えてくれてるのもとっても嬉しい。
「斗織さん斗織さん、遼司くんは斗織さんの特別ですか?」
マカロンの箱をテーブルに置いて胸にギュッて抱き着くと、その言葉の意味を正しく理解したんだろう。
「ああ、…沙綾さんにな」
照れながら左手を背中にまわして、右手で頭を撫でてくれた。
「変なもん返さないように、つってお返しの意味がLimeで送られてきた。手作りじゃなくて悪ィんだけど」
「ううんっ!俺の為に用意してくれたんだもん。嬉しい!」
「なんか…さ、お前、……イイヤツだよな」
しみじみと吐き出された言葉。
けどさ、……うぅ~ん?
それって、『イイヤツ』って、恋人に向けて言うセリフ?
「遼」
「…はい?」
「もっと、俺にワガママ言っていいんだからな」
「ええ?俺、結構ワガママだと思うんだけど」
「じゃあ、お前がワガママだと思う10倍甘えてこい」
「………うんっ!じゃあ、マカロン咥えて食べさせて!」
「それ、全然ワガママじゃねェだろーが」
結局俺は、そんな言葉回しなんてすぐにどうでも良くなっちゃうくらい、斗織のことが大好きなのです。
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