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第390話 要らない素質
「えっと……それは……まあ、おいおい?」
「今なら教えてやれるぞ」
引けよ!
ほんとは拒絶したいトコ、そっといなしてやってるんだってーの!
「だって…、折角斗織がいるのに、くっついてられないのヤダよ? 斗織にぜんぶシて欲しいのに……。
斗織、俺に飽きちゃったの…?」
瞳をウルウルと濡らして見上げると、斗織は焦った顔して、
「んなワケねェだろッ!」
俺の体をおもいっきり、ひしゃげるくらいに抱き締めた。
よし!巧くいった!
けど……、イタタッ!痛いっ!強い!馬鹿力ッ!体潰れる~~っ!!
「あ、それからこれな」
ふいに、何事も無かったかのようにペチャンコ間近だった俺の体を解放すると、斗織は唐突にしゃがみこんでカバンの中から何かを取り出した。
その隙に、手足を振って体を解す。
うぅ~~、ピキピキいってる。容赦無い馬鹿力め。
斗織から差し出されたのは、赤い厚手のビニールの包みだった。
ありがとう、と受け取って開けると、中には色とりどりのTシャツが…5枚?
みんな淡い色の無地で、イエロー、グリーン、スカイブルー、ピンク、ラベンダー。形もシンプルな丸首だ。
「お前、カッターシャツの下になんも着ねェだろ?」
「うん」
「乳輪透けてっからそれ着ろ」
「───はいっ!?」
「夏服の時とかな、ふとした瞬間に透けてんの見えて、モゾモゾした覚えがある、そう言えば…」
「…………」
うぅぅ……
そういう事、照れながら言うの反則だってば!
だって夏服の頃って、まだ全然付き合うどころか、話したことだって無かったんじゃない?って頃じゃん!
そんな時から、俺の胸見てなんとなく反応しちゃったってことはさ……
斗織ってば、そんな頃から俺のこと………
「お前ただでさえエロいんだから、俺の居ないトコで乳輪透けさせんなよ。襲われっから。お前、男を勃たせる素質あんだから」
「───っなんだよそれは!!」
期待させといての、なんて物言いだ!言いがかりだ!
なんだよその『男を勃たせる素質』ってのはぁっ!!
「もぉっ、それってさ、斗織がそもそも俺のことエロい目で見てたからち○ちん反応しちゃったって事なんじゃないんですかあ?」
「いや、俺中山じゃねーし」
「なんでそこで中山が出てくんの…」
「あっ、テメェなに他の男の名前呼んでやがる」
「先に呼んだの斗織だからね?!」
ヤキモチ焼くタイミング!!
「兎に角、夏服とか、冬服でも暑くなったらブレザー脱ぐだろ? 1枚になる時は絶対これ着ろよ」
改めて押し付けられた、パステルカラーのカラフルなTシャツ。
転校先、カラーシャツが校則で禁止されてないとこだといいな。
……にしても、だ。
「う…うん……。あのさ、他の色はまあ、いいんだけど、ピンクってさ…俺、男だし……」
「似合う色選んでたらそうなった」
「ピンク…?」
「似合うだろ?」
似合うかな?
……似合うのか?
………でも、斗織が似合うって、ドヤ顔してるし……
まあ、いっか!
斗織が言うんなら似合うんだろ。
「とーるぅ」
「ん?」
「立ってるの疲れたから、やっぱりベッドいこ?制服脱がさなくていいから、あっちでいっぱい可愛がって…ね?」
「………しゃーねェな。わかった」
斗織の手を両手でぎゅってして引っ張ると、照れたように微笑して、頭をくしゃって撫でられた。
やった!エログッズの存在忘れさせたぞ!
「遼、コレ、実践で使い方教えとくか?」
「っ───!!」
やっぱり忘れてなかった!!
「うっ…ううんっ! 折角本人が居るんだもん。斗織だけを感じたいよ!」
「……まぁ、そうだな」
やたらと意気込んじゃったけど、斗織は納得してくれたらしい。
「はやくはやくっ」
「そう急かすなよ」
苦笑気味の斗織を引っ張って、エログッズを置き去りにベッドへ急ぐ。
なんか俺、すっごくヤりたい人になっちゃってるけど……
斗織の前でヘンなもん突っ込まれるよりずっとマシだ!!
まあそんな訳で、制服えっちにいつもより燃えちゃったらしい斗織にいろんな体位で襲われちゃった俺は、情事後お風呂に入れてもらって、ベッドに寝かしてもらって、次に気付いた時はもう朝で……
慌てて二人分の朝ごはんと3人分の(父さんのと俺のと、勿論斗織の!)お弁当用意して、まだ痛む体をおしてヨボヨボと学校へと向かったのだった。
父さんが母さんとホワイトデーディナーデートで良かったけど……
平日にヤリ過ぎ禁止!!
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