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第391話 もっと早く

金曜日。 終業式を終えた俺達は、いつもの6人で級長の家を訪れていた。 出迎えてくれた級長のお母さんは、初対面の俺達の名前を全員分間違わずに当てると、満足気に頷き、何処かへ出掛けて行った。 おばさんが居ちゃハッスルし辛いでしょ?って笑いながら。 テーブルには6人分…ううん、多分男子高校生は食べると踏んでの、大量のお寿司の飯台がズラッと並んでた。 「かあさん、気張ったなぁ…」 リューガくんが苦笑しながら呟く。 「「───っ!!」」 素早く反応したのは俺とひろたんだ。 「りゅーがくんっ!」 「きぅちょうのお母さんのこと“かあさん”って呼んでるの!?」 「呼んでるのっ!?」 ひろたんがうんうん頷きながらリューガくんに食らいつく。 「えっ……ああ、バレンタインの時からな…? そう呼ぶようにって言われて…まぁ……」 「いいなぁ!」 羨ましそうに頬を染めるひろたんに、俺も、いいなぁって繰り返す。 俺は、斗織と一番の仲良しってとこまでは認められてるけど、まだ付き合ってるとは言えてない。 そんな俺が、いいなって羨ましがっちゃうのは、違うのかもしれないけど……… 「……遼」 おっきい手のひらがぽん、と俺の頭を撫でた。 「斗織……」 うん……、わかってるよ。 『周りから固めて遼ちゃんをお嫁さんにもらおう大作戦』、日々頑張ってくれてるんだもんね。 約束守って迎えてくれる日まで、ちゃんと待ってるから。 だから、俺にも出来ることがあったら、遠慮しないでちゃんと言って欲しい。 俺だって当事者だもん。男だもん。 斗織任せにしないで、一緒に頑張りたいよ。 髪を伝って頬に下りた手に、スリ…と顔を擦り寄せた。想いを込めて。 「そう言えば、言うの忘れてたんだけどな」 「ん…?」 「母上が、今日、遼のこと夕飯に誘っとけって」 「っ───!はいっ!?」 ちょっ…!それは確かに俺にも出来ることで、嘘じゃなく、俺に出来ることは言って欲しいとも思ってるけどさ……!! 出来ればもっと早く言っといて欲しかったよ! 心の準備~~~っっ!!!

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