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第392話 お嫁さん服
2月末の食事会の後も、斗織のお母さんには何度かお会いしてる。
木曜日の家庭教師の授業の後の大和お兄ちゃん宅での夕飯でご一緒したり(お兄ちゃんが留守の時だけ)、社交辞令だと思っていた『一緒にお料理』も、一度だけだけど本当にお呼ばれして実現した。
(失礼ながら、本当に危なっかしい包丁さばきだった。油ハネから大仰に逃げてた。)
会えばいつもニコニコしてくれてるし、好かれてる…は言い過ぎかも知れないけど、嫌われてはいないと思う。
そこに来ての、ご飯へのお誘い。
今日は家庭教師のお仕事は無いから、行ったらご飯が出来上がってるって状態じゃないと思う。
つまり、ただのお客さんってわけじゃない。
多分、俺の嫁としての実力が試されるんだ───!!
いつもも片付けは手伝ってるけど、今日はそれだけじゃない。
エプロン持参で進んでお手伝いしなくちゃ…!
それも、嫁として出過ぎないように良い塩梅で!!
「斗織!エプロンどれが良いと思う!?」
俺の着替えについてきてくれた斗織に、クローゼットを開いて訊ねる。
「ん~……、コレ」
スカイブルー、チェックのフリフリ。
……………却下!!
「もっと男らしいのーっ」
「あぁ?んなもんあっか?」
「服も選んで!男らしいの!」
「……いや、だから無ェだろ。こン中に男らしいのなんか」
男らしいのって言うかね、ブリブリってしてない清楚なのが良いと思うんだよ。
女の子が好きな服でも、男が好きそうな服でも無く、息子のお嫁さんにするならこういう服装の子、ってお母さん達に思わせるような服。
そういうのあったかなぁ?
うぅ……もう、なんで男の俺がこんなことで悩まなくちゃいけないんだろ。お姉ちゃんが可愛い服ばっかりくれる所為だよ。
貰っといてなんだけど、もっと普通の男服をください!
「ふぇ~っ、清楚なのってどれだろ~~??」
「ん?男らしいのから清楚なのに変更したのか?」
「変更してないよ。始めっから素敵なお嫁さん服探してんのっ」
吊るさってるシャツ、畳まれてるパンツ、ピラピラ捲って混乱状態の俺を、息を漏らすように笑った斗織が背後からぎゅって抱き締めてきた。
「とおる…?」
うなじにちゅ、ちゅ、って唇が押し当てられる。
「…なぁに?」
「…いや。俺の嫁は可愛いなと思ってな」
「……そ…ですか……」
なんで急にそんなこと…!?
そんな顔してそんな声でそんなこと言われたら、可愛い嫁の俺が照れちゃいますよ?!
「…ヤベェ、押し倒したくなってきた……」
熱の篭った視線にゾワリと震える。
ヤバい……、俺も押し倒されたくなってきた…。
「けど時間無ェから、明日までお預けな?」
最後に首筋を甘噛みして、斗織の唇は離れてく。
痕付いてねェな、オッケ。なんて噛んだあとを指先で撫でて……
もし俺がネコなら、気持よくってゴロゴロ言っちゃうような撫で方で。
「どれがいっか…」
「……ずるい」
クローゼットの服を1枚1枚確認する斗織。
その背中にぎゅっと抱きついた。
お互い立ってると首には届かないから、ブレザーの背中に顔を埋めて、ズクン──って熱くなっちゃったソコを脚に押し付ける。
「コラ、遼」
「ンぁっ…、あっ、ダメ…、握っちゃやぁっ」
「嫌じゃなくて、もっと、なんだろお前は?ヤる時間は無ェけど、1回抜いとくか?」
「……うぅ~…、その言い方やだぁ」
「じゃあ、なんて言やいんだよ?」
開いたクローゼットはそのままに、斗織は俺を抱き上げベッドに移動する。
「うん…とね…?」
膝の上に向かい合わせに座らされて、また喉を指先でこしょこしょ。
きもちい……
「お前が可愛くて堪んないから、一緒に気持ちよくなろう…でどうかな?」
首に腕を巻き付けて、屈んだ斗織に腰をグッて押し付けると、斗織のもちょっと硬くなってるのが分かった。
「お前のは、なんでこうなってんだよ?」
「あん…っ」
グリッて押し付け返されて、思わず声が上がる。
「なんでって……」
俯いて、上目でそっと伺い見ると、ニヤリと意地悪く笑う恋人の唇が見えた。
……そんな顔も…かっこいいなぁ……
「あの…ね?……俺の恋人がかっこよすぎるから、一緒にいるだけでキュンキュンしちゃうの」
座ってやっと届くようになった首に、ちゅって唇を触れさせる。
「だから、こんなになっちゃった俺のち○ちん、斗織のと一緒に気持ちよくさせて」
「………100点」
「採点式!?」
100点満点をくれた筈の斗織は、額を押さえて何故だか長い溜息を吐く。
「他の奴にソレやんなよ」
「やんないよ?!」
「ココ、舐めてやろうか?」
「え?えぇ~?明るいからちょっと恥ずかしいなぁ~」
「って、モジモジしながらしっかりベルト外してんじゃねーか!」
そんなこんなで少しだけ。
時間の許す限りラブラブしまくった俺達だったのでした。
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