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第395話 三兄弟のヒミツ
「ねぇ、リョー君。斗織は優しい?」
再び傍にやってきたマナちゃん先生から、こそっと訊かれた。
「勿論。すっごく優しいですよ」
別に声をひそめる必要はないんだけど、俺も耳元に顔を寄せてこっそり答える。
「一也お兄さんは訊くまでもなく優しそうですよね」
「優しいけど…どうだろね」
意味深にニヤリと笑う。
「結構野獣。アレもデカいしね」
アレって……、アレのことだよね…。アレ…のことなんだろうな………
「どう? 斗織のち○こもでっかい?」
やっぱりアレだった…!!
「うぅ……、当社比1.5倍です……」
「うんうん、大和のもデカいしさ、ここの兄弟のはみんな立派だよねぇ」
う……、やっぱりお兄さん達もおっきいんだ……
なんか、なんとなくそんな気はしてたけど、なんか………
「遼、マナちゃん、こそこそ話してるつもりかも知んねェけど、全部聞こえてっからな」
「え゛っ?!」
斗織の言葉に振り返ると、呆れ顔の恋人と、困ったように笑うお兄さんの顔とが見えた。
「あっはっは、知ってる~」
「えっ!?」
悪びれないマナちゃん先生。
もしかしたら俺は、担がれたのかもしれない。
羽崎家の広くて長い廊下を4人で歩く。
いつ見ても、この家のスケールはおかしい。
こんな伸び伸びと歩ける広さのある家で育ったから、兄弟3人とも長身になったのかな?
……いや、羽崎家はお父さんもお母さんも長身だった。
長身の遺伝だ。
それ言ったら俺だって、父さんおっきいし、伸びても良い筈なんだけど……
やっぱり母さんが小さいからかな。
小さい方が遺伝子的に優勢なんだろうか。
………っ!! いやいやいやっ、今の無し!!
俺成長期真っ只中だもん!
まだこれから伸びるんだもん!
今年の夏辺りぐぐーってさ、斗織越しちゃう勢いでおっきくなるもん!
そしたら俺、斗織のこと見下ろしちゃうのかな…?
斗織のつむじとか、見えちゃったりする?
俺のこと見上げる斗織………は、可愛いと思う。
それでも絶対かっこいいのは変わらないと思う…けど……
「斗織よりおっきくなっても俺……可愛いって言ってもらえるかなぁ……」
うぅー…、前に斗織、それでも好きって言ってくれたけど、でも、伸びないように押さえつけてやる…とも……
それってやっぱり、俺がおっきくない方が可愛いって思ってるってことで、でももう4月から一緒に居られない俺は、斗織が押さえつけられない場所で背が伸びちゃうってことで………
「うぅ~~」
「遼……」
頭にポンって優しい手の感触。
「なぁに?」
「要らねェ心配すんな。お前、成長期終わってっから」
「っ───斗織エスパー!?」
なんで俺の頭の中読めるの!?
愛のなせる技!?
「んー…、僕も成人してるけどこんなだしさ、リョー君も止まっちゃうと思うよ、身長」
「マナちゃん先生まで…っ!?」
「遼司君、声に出てたよ」
悪いなって思ってることが分かる表情で、だけど一也お兄さんがくすりと笑う。
「………あの……、忘れてください……」
皆から向けられる生温かい眼差しに堪えられなくて……
前を歩く斗織の腰にぎゅっと掴まって、着物の背中にぽすんと顔を埋めた。
今日の着物も、お香の良い匂いがします。……くんくん。
このままここで寝ちゃいたいくらい心地良い香りです。
今日は抱っこで眠らせて欲しいな……。
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