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第397話 俺達の想い
斗織が凄く真剣に、俺とのことを本気だって、大切だって、絶対に失いたくない存在なんだって──そう訴えてくれてる。
俺の手を握る手の力は強くて、俺のぬくもりから勇気を受け取りたいんだなって分かるから……
俺の為、それから2人の未来の為に頑張ってくれてる恋人の為に、俺も出来ることを探し………たいんだけど!
お姉ちゃん!母さん!!
気が散るから声を殺して大笑いするのやめてもらえないかなあ!!
子供たちはちゃんとお利口でおとなしくしてるのに、大人がそれを出来ないってのはどうなの!?
「どうか私達の関係を認めて下さい。お願いします!」
手が前にグッと引っ張られて、斗織がお辞儀してることにハッと気付いた。
慌てて俺も手を突き頭を下げる。
「お願いします!」
訴えかける斗織の声が止んだから、その場は静寂に包まれた。
「ケフンッ、ケフッ…クッ」
「ゲホゲホッ……フッ…クッ…」
うちの母娘!!
誤魔化し方ソックリだし!
「「…んんっ………………」」
……………今度こそ、静寂に包まれた。
「遼司さん」
「はい」
斗織のお母さんから声を掛けられ、顔を上げる。
「気が散りすぎです。やり直し」
「……すみません、やり直します」
斗織はこの状況に気付いてるのか気付いてないのか……
俺の手を指一本一本絡ませるように握り直した。
俺のこと、安心させてくれようとしてるんだと思う。
………………うん、ごめんね。
俺、結構今がっつり落ち着いてる……。
「俺には小学校入学前からの幼馴染がいます」
そして俺は皆の前で、しーくんのことを───友達を作るのをやめてしまったことを話した。
どうせ1年で転校するのだし、その場限りで上辺だけの付き合いを、気の良いクラスメイトを演じておけば良いと思っていたのだと。
誰とも仲良くせず、誰とでも仲良くして、また転校することも知らせず、ひっそりと転入転校を繰り返した。
ここに来たときだって、変わらない思いでいた。
友達なんていらない。ただの目立たない転入生、クラスメイトでいい。
だから、事あるごとに中山が話し掛けてきてくれる事だって、迷惑に感じていたんだ。
あの日、斗織の別れ話に口を突っ込んだのだって、ただの気紛れだった。
女の子が可哀想に見えたってのが一番だったけど…。
見知った顔の目を引くクラスメイトと、少しだけ話したくなっただけ。
俺達の関係を否定されることをもう危惧してはいないけれど、すべてを正直に、誠実に打ち明けようと思った。
「だけど本当は、淋しかったのだと思います。
だから俺は、俺を受け入れてくれた斗織に、恋をしました」
繋がった手が、ピクリと動いた。
一番傍から俺を見つめる瞳に、熱が篭ったように感じるのは気のせいか……
「誰かに…俺を見つけて欲しかった……。それが、斗織で良かった。
俺のことを、トラウマごと抱き締めてやるって、全部受け止めて受け入れてくれた斗織で良かったって、心から思っています」
ズズッて……鼻を啜る音が聞こえた。
斗織の向こう側と、部屋の中。
多分、マナちゃん先生と、お姉ちゃん。
「結局、幼馴染のことは俺の勘違いで、彼は俺のことを忘れてなんていなかったんですけどね」
少し恥ずかしくなって笑うと、視線の先で斗織のお母さんも静かに微笑んでくれた。
一度目を閉じて、拳をぎゅっと握る。
改めて床に手を突き、深く深く…頭を下げた。
「ずっと、……これからもずっと、斗織の傍にいたいです。支えてくれる斗織を、俺も支えていきたい。斗織と一緒に生きていきたいんです。
お願いします!」
「………俺は……、25までに相手が居なきゃ勝手に選んだ相手と結婚させるって言われて、焦って相手を探してたけど、誰にも本気になれなかった。
まだガキだから、相手が俺自身を見てないから……、年の所為とか相手の所為とか、俺の所為じゃない、そもそもそんな事を押し付けてくる母上が悪ィんだって恨みに思ってたけど……
俺が本気になれなかったのは、まだ遼に逢ってなかったからだった。
俺は、遼と添い遂げたいと思っています!お願いします!」
「────許しません」
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