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第403話 先生と生徒

ほら、もう怒ってないからこっち来い、とかなんとか言っていたずらっ子の甥っ子を抱っこしてあげてる優しくて格好良いカレシにラブラブ光線を送ってると、不意にツンと袖を引かれた。 「先生…」 征二くんだ。 「なぁに?」 「あの……」 俺の服の袖を掴んだまま、言いづらそうに視線を落とす。 その視線の先には、……俺の膝? 征二くんも抱っこして欲しいのかな? だけどお兄ちゃんだから、…もしかして俺が先生だから? 抱っこして、って言えなかったりする? えと……、こういう場合、「抱っこして欲しいの?」って訊くのは失礼だと思う。 幼児にだってプライドはある。 だから、うぅん………どうしたらいいんだろう? 「───ぎゅっ」 「っ!!」 「征二くん、実は先生、生徒の征二くんが可愛くて仕方なくて、抱っこしたくて我慢できなくなりました。お膝に座ってもらえませんか?」 「……はい。ぼくも、先生のおひざに すわりたいです」 にこぉって笑った征二くんが、膝にちょこんと乗ってくる。 かっ…かわいいっ!! 何これ、俺の生徒メチャクチャ可愛いんだけどっ!! 「あら、よかったわねぇ、征二」 「はい!おばあさま」 後でお兄ちゃんと芽衣さんがこっそり教えてくれた。 いつもは、はじめに真衣ちゃんが気分で誰かの膝に乗って、余った膝に侑士くんが座る。 征二くんはお兄ちゃんだからと、1人でおとなしく座っているらしい。 やっぱりまだ甘えたかったんだな…と、お兄ちゃんが言った。 我慢させてたのね、と芽衣さん。 お兄ちゃんだけど、まだ5歳だもんね。 お兄ちゃんだから、弟妹たちの為に良い子で場所を譲ってあげてたんだね。 侑士くんが産まれたのが2歳の頃じゃ、自分がお母さんを独り占めしてた事だって記憶にないだろうし…… よし!最後の授業の日には、目一杯構い倒しちゃおう! もうイヤだ 放して!って言われちゃうくらいに、いっぱいぎゅーってしよう。

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