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第411話 ご主人様
「まあ…誘ったお前が悪いってことで……」
ほんとに思ってるわけじゃないんだろう。
けど、そんな事を嘯いて、俺の上から体重をずらすと斗織は、
「遼、四つん這い」
───やっぱりご主人様か!!
な指示を飛ばしてきた…!!
「ほら、早くしろ」
顎から耳に指先を擽るように滑らせ急かす。
そうやって甘やかせば俺が自分の言うこと聞くって分かってやってるんだから、たちが悪い。
……んだけど、やっぱり思惑通りに言うこと聞いちゃう俺。
しょうがない……
だって、惚れた弱みには勝てないよ………
斗織に借りた浴衣姿。
ちょっと大きい淡藤色の浴衣は、斗織が中学生の頃に着ていた物らしい。
前が肌けないよう気を付けながら、体を回転させる。
何されるんだろう……
ビクビクしながら(半分はどきどきしながら)恥ずかしいポーズのまま待ってると、足下に回った斗織の手により、ペロンと浴衣が捲られた。
「んんッ…!!」
俺、見せないように隠してたのに!
「………遼…、お前な……」
呆れ声出して、丸出しになったお尻をぺちん。て………
だって、しょうがないじゃん!
斗織が貸してくれたパンツ、ゆるゆるで落ちちゃうんだもん!
パジャマでズボン穿くならさ、俺だって頑張って穿き続けたよ!?
でも、貸してもらったの浴衣だもん。
下ガラ空きで、穿いた瞬間ストン──って落ちちゃうパンツなんて、脱いじゃった方が楽ちんじゃん!
───って事を伝えたいのに、口が塞がれてる所為でうーうーとしか声が出ない。
俺が、エッチな気持ちでノーパンでいたって思われたら嫌なんだけど!
確かにエッチな気持ちではいたけど、それとノーパンは別物だもん。
懐に忍ばせたパンツだって、別に盗んで持ち帰ろうお宝ゲット!とか思った訳じゃなくて、手で持ち歩いてるのもなんだから取り敢えずポッケに仕舞って移動したぐらいの…アレだもん。
いやいや、ほんとに! 部屋戻ったら返すつもりだったし。……忘れてたけど。
だけど……
ノーパンだったことに逆に気を良くしたのか、斗織はするりと俺のお尻を撫でると、そこにちゅっとキスを落とした。
「お前、ここから見ると……ヤラシイよな」
そんなの……、俺だけじゃなくて誰だって、その角度から見られたらそうなっちゃうと思う。
……だって、お尻も……多分、隠しときたい孔も丸見えで、フクロの部分もチラ見えしちゃってるんだろ…?
そんなの……やらしく見えない方がおかしくない?
まじまじと視られてる気配に、恥ずかしくて、「やだ」って声を上げたつもりが、
塞がれた口からは「くぅ~ん」って可笑しな音しか漏れなかった。
「四つん這いでイヌの真似か?」
意地悪言われてるのに、勝手に後ろがヒクヒクッて反応しちゃう。
違う!って言いたいけど口が開かなくて、振り返って首を横に振れば、冗談だったのか斗織は悪い顔をしてフッて笑った。
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