413 / 418

第414話 最後の一週間

それからの日々はとても穏やかに、けれどあっという間に過ぎて行った。 仕事の引き継ぎに早めの引っ越しも終え、父さんは先に転勤先へと旅立っていった。 「一週間ぐらい一人でも大丈夫だから」と説き伏せられ、俺は学校が始まる前週の金曜までの最後の一週間を、母さんのタワマン……じゃなくて、羽崎家でお世話になってる。 一足早い花嫁修業です。って、お母様に茶道を習ったり、お手伝いさんのハナさんからは斗織が小さな頃から好きな煮物の味付けを教わったり。(逢えない間にもっと料理の腕をあげておく予定) 木曜日、最後の家庭教師の授業の後には、大和お兄ちゃん一家がお別れ会を開いてくれた。 いつもしっかりお兄ちゃんしてる征二くんが珍しく甘えん坊で、ご飯の時以外ずっと俺の膝に座ってた。侑士くんに蹴られても真衣ちゃんに泣かれても譲らず必死に守ってた。 お暇した後、斗織が思わずヤキモチ焼いてお母様の前だってことも忘れて俺のことギュッてしちゃうくらいベッタリで、すごく可愛かった。 ……うん、征二くんも斗織も。 皆も、斗織の部屋に集まってお別れ会を開いてくれた。 リューガくんは、「お別れ会じゃなくて、また1年経ったら戻ってくんだから、またな会な」って。 ひろたんは最初から涙ぐんでて、笑ったり泣いたりと忙しかった。俺も釣られてウルッてきちゃった。 級長からは、お戻りの際には返してくださいね、って薄い本を束で渡された。 中山はやっぱりイジられ役で、斗織やリューガくんから からかわれてはひろたんに泣きついてた。 そして、旅立ちの朝─── 俺は斗織の腕の中で目を覚まし、その胸にぎゅっとしがみついた。

ともだちにシェアしよう!