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第6話 俺のモン2
【斗織Side】
狙ってるって、男が男を!?
いや、ホモならそれもアリか?
いや、にしたって、紫藤はホモじゃねえだろーし………
ん?俺と付き合いたいって言い出したのアイツだし、紫藤もホモ?
……まさかっ、アイツと付き合ってる時点で俺もホモ!?
なんだよ、このクラスホモばっかかよ……。
って、ちげーちげー。俺はさっきまで女と付き合ってたし、俺はホモじゃねえ。
紫藤が特殊なだけだ。
アイツが、可愛いのが悪ィ……。
「紫藤が電車の中で痴漢されてたの見たって奴も居るしさあ、…あーゆう男にモテる男ってのも居ちゃうんだなぁ。オレは女の子好きだからわっかんねーけど」
…は? 痴漢……?
「痴漢されてたのか…?」
「あ?んー、らしい」
「見てねーで助けろよ!」
「見たのオレじゃねーよっ」
痴漢って…、相手、男なんだよな?
女だったら痴女だろ?
いくら紫藤が可愛いからって、男に男が痴漢するか!?
そう思って見ると、中山もやたらに距離が近い。
むしろアイツが痴漢してんじゃねーのか?
顔近ェよ。なに手ェ握られてんだよ。振り払えよ、お前は俺のオンナだろーがよ!
さっきキスした唇が、またキスを強請るように突き出されてる。
いや、そんなつもりねーのかもしんねぇ。……けど!
中山の方にその気アリアリじゃ、危ねーだろが!!
ちったぁ危機感覚えろ、天然エロスが!
ツカツカと歩み寄り、声を掛ける。
「唇、ムーって尖ってんぞ」
振り返ったその口を、指先で挟んでやった。
「うー?ふぬすくぃ~っ」
なんだ、ふぬすくぃ?羽崎って、全然言えてねーじゃねェか。
「んーっ」
「なんだ?またキスして欲しいのか?」
「んーんっ」
からかうように覗き込むと、眉をハの字にして赤く染まった顔を横に振る。
仕方なく指を離してやると、自由になった唇で弧を描き、紫藤は俺を見上げて嬉しそうに笑った。
「羽崎が教室で話し掛けてくれたの、初めてだよね」
「っ……!?」
なんだ!?今、心臓が妙な音立てやがったぞ?!
しかも、脈拍数がやたらに上がった気がする。
「そっ、そうだったか?」
噛んだ…、なんだ?声が上擦った……?
「そうだよ~。委員会もバラバラだし、同じクラスってこと以外接点もなかったからさ、用がなければ話さないでしょ」
「まあ、な。これから話しゃあいいだろ。そうだ、中山、お前席替われ。俺の特等席をくれてやる」
「……って!ちょちょっ、ちょっと待って!」
「お兄さん?」
焦った様子の中山の語尾に、天然なのか紫藤がお笑い芸人のネタを被せていく。
「違う違う!お兄さんとかじゃなくて!」
中山が喚いているのを、いつのまにか傍に居たマメが「煩い」と、その頭を叩いた。
それに被るようにして、ブツッと放送の電源が入る音。
「そんな事よりトオル、お前、…紫藤にキスしたの?」
キーンコーンカーンコーン……
授業開始のチャイムが鳴った。
その音にかき消されて、周りの連中にマメの声は聞こえなかったと思う。
ただ、マメは眉間にシワを寄せて俺を見上げていて、
中山は泣きそうな顔で何度も頷いていて、
俺の目には、ブレザーの裾を掴んで心配そうに見つめてくる紫藤の顔が、映り込んでいた。
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※こちらは他投稿サイトからの移行作品の為、投稿中に話題になっていた芸人の、今では滅多に聞かない懐かしのネタが使われております。
決して、遼司が時代に取り残されている訳ではありません。
ご了承下さいませ。
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