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第9話 ドーン!!

「羽崎、俺一人で帰るから、大豆田くんと一緒に帰って」 「は?」 声を掛けてカバンを担ぐと、羽崎が怒った顔をして睨んでくる。 眉間にしわ寄せて、眉毛吊り上がっちゃって、ちょっと怖い。 「俺やっぱり、一人の方が気楽なんだよね。だから、付き合いたいって言ったのも忘れて。おねがい」 ごめんね、羽崎。 でもアンタだって、ただの興味本位だったんだろ? 俺の言葉のおかげで元カノと別れられたから、その感謝の気持ちで、とか? そんな怖い顔しなくても、明日になったら、 昨日のは何だったんだ……結局付き合うことにならなくってよかった。 って、そう思ってるよ、きっと。 「じゃあ、また明日ね」 また明日、なんて……明日になったらきっと、何も無かったことになってまた元通りなんだろうけど。 背を向けて、歩き出す。 やっぱり俺に特別な相手なんて、高望み過ぎたんだよなぁ。 いやぁ、しまったしまった。調子に乗っちゃった。 ………バカだなぁ、俺。 「馬鹿かテメェは」 低い声が追いかけてくる。 ……うん。バカだよね、俺。 ちゃんと、わかってるよ。 ごめんね、羽崎。振り回しちゃって。 殴られるかな…? 痛そうだな。1発ぐらいで許してくれるかな? 「柴藤!」 肩を掴まれて、振り向かされる。 思わずギュッと目を閉じた。 「チュッ」 …えっ………? そーっと窺うように目を開いて見上げると、羽崎の顔が、瞼を開きながら離れていった。 離れて…いった…………?? 「あっ…え……なんでっ!?」 まだ温もりの残る唇を押さえながら訊ねる。 「なんでって、お前は俺のモンだろーが。キスして何が悪い」 ドーン!!って効果音が付いちゃうような顔で、仁王立ち。 羽崎は俺の腕を引くとつんのめりそうになった身体を抱き留めて、もう一度唇を重ね合わせた。 俺……、今日4回もキスしてる……。 キスなんて、した事なかったのに……… 離れていく唇を、ぽぉっと視線で追いかけてしまう。 ふわふわする。 ドキドキする。 きもちよくて、 それから、なんか……嬉しい気がする。 「あー…ウンっ、ンーッ」 傍らから咳き込む声。 腕を突付かれて見下ろすと、大豆田くんが教室のドアを指差した。 「うん?」 首を傾げると、床に落としてたカバンを渡してくれる。 「ありがとう」 「いや、ありがとうじゃなくて!……とりあえず、ズラかんぞ!」 「え……?」 突然走りだした大豆田くん。 羽崎は出遅れた俺の手を掴んで、その後を追う。 結局一緒に帰るのかな? 誰かと帰るなんて、久し振りだなぁ…… なんとなくソワソワする心にすら嬉しくなって、俺は今にも笑い出しちゃいそうな顔を、懸命に引き締めなくてはいけなかった。

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