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第10話 遼

羽崎に手を繋がれて、そそくさと教室を出た。 気付いたら周りから好奇の目を向けられたり、コソコソとなにか言われてたり…… 恥ずかしかった、と訴えると、羽崎はそうか、と小さく笑った。 羽崎は、恥ずかしくなかったのかな? ……恥ずかしかったらあんな所でキスなんてしない、か。 やっぱり、お付き合いに慣れてる人ってのは、堂々としてて格好良いよなぁ。 隣を歩く羽崎を見上げる。 昼休みと同様にちょっと後ろを歩いていたら、隣に来いって言ってくれた。 何気に気遣い細かくて、優しくて、今日の数時間で羽崎の好感度、ぐんぐん上がってる。 羽崎の向こう側には、大豆田くんが隣に並んで歩いてる。 それから俺の後ろ、付かず離れずの距離に中山。 「お前、精神鋼かよ?良くついて来られたな」 振り返った羽崎が、呆れた顔して中山を見てる。 俺が、一緒に帰るの嫌がってたから、かなぁ? 悪いことしちゃったな。 羽崎が一緒だったら、他に誰が居ても大丈夫な気がするし。 「中山、電車どっち?」 訊ねると、上り、と答えが返ってくる。 「あ、俺と一緒だ。降りるまで電車一緒しよ」 「マジで!?───っしゃ!」 なんだかスゴい、両手でガッツポーズ。さすがサッカー選手って感じだ。 「リョーちん、オレらも上り~」 「…リョーちん?」 大豆田くんが手を上げるから、真似して上げると、バチンッてハイタッチされた。 「そっ。シトウリョージ、だろ?だからリョーちん。やだ?」 「ううんっ!やじゃないよ」 「んじゃ、オレのことはリューガって呼…」 「マメ!」 『ガ』の辺りに食い込む勢いで、羽崎が大豆田くんのことを大きな声で呼んだ。 「んだよ、トオル?」 「いや、マメだろお前は」 「誰がマメだよっ!!テメーだけだっつーの、んな失礼呼びすんのは!」 小さい身体で20cmくらいおっきい羽崎に食って掛かる。 仲、いいんだな…。 なんか、微笑ましい。 「いいか、リョーちん、リューガだかんな!」 殴ろうとした手は額を押さえられたら届かなかったらしくて、諦めた大豆田くん…リューガくんは俺を振り返ると言い聞かせるように、拳をぎゅっと握った。 なんだか可愛い。……って言ったら怒られるかな? そう言うの、気にしそうだもんなぁ。 「うん、わかった。りぅがくん」 頷いて、望まれたように呼んだのに、リューガくんにブハッと盛大に噴き出された。 「えっ、マジで!?リョーちんスゲー舌っ足らずなんだけどっ!」 「えっ、ごめんっ、ヘンだった!?」 「いや、カワイイ、オールオッケー」 可愛いって……、リューガくんのがちっちゃくて可愛いのに……。 「じゃあ俺もゆう…」 「中山!」 何か言い掛けた中山の言葉を、さっきよりもより食い気味、より大きな声で羽崎が遮った。 「中山の事は中山って呼べ。分かったな、遼」 見つめられて頷けば、頭をヨシヨシと撫でられる。 遼…だって。えへへ。 俺も、斗織って呼んだらダメかなぁ? ……良いって言われてないんだから、さすがにダメだよね。

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