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第11話 クチバシ
駅に着いて、ちょうど滑り込んできた電車に乗る。
4人揃って上りなのが嬉しい。
中山はうちの最寄りの一個手前の駅で降りていった。
羽崎とリューガくんは、まさかの同じ駅だった。
朝、乗る時間が違うのかなぁ。
全然知らなかったし、気付かなかった。
「リョーちんってドコ中?」
「うんとねぇ、俺4月に転入してきたから……卒業したのは富山の中学校」
「あっ、そっかー。オレらあそこ!うっすら見える?坂の上の」
リューガくんが指差す方に、確かに、見える……様な気がする。
「富山から来たにしちゃ、訛ってないのな」
頭にポンと手を置かれて、顔の向きを変えられた。
見上げると、また唇をはむっと指先で挟まれる。
羽崎と一緒にいたら、俺の唇、クチバシになっちゃいそう。
「ふぬすくぃ~んんぅ~~」
離せ離せと訴えると、もう一度パクッと摘んでから離してくれた。
「もぉーっ、唇伸びちゃうーっ」
「悪ぃ悪ぃ」
今度は指先で押し戻すようにトントンされる。
そんなんで直ったら世話ないよ。
「あのね、親が転勤族で、富山の前は仙台に居たの。広島とか、愛知とか、新潟とか色々。いちいち訛りになんか染まってらんないでしょ。元々地元はこっちだし」
「ふ~ん。若いのに苦労してんだなぁ」
リューガくんが、頭をヨシヨシと撫でてくれる。
若いって、俺2人と同い年だし、見た目だけならリューガくんのが若いんだけどなぁ。
暫く一緒に歩いていると、2人が横断歩道の前で止まった。
あっち渡るのかな?
「あの、俺こっちだから」
2人が向いているのと別の方角を指差して伝えると、
「家まで送る」
羽崎が身体の向きを改めた。
『俺のオンナ』だからかな。
俺、男だから送ってもらわなくても平気なんだけど…。
「ありがと。でも大丈夫」
信号が青になったから、早く行きなよ、と促す。
「羽崎、りぅがくん、一緒に帰れて楽しかったよ。また、明日ね」
「おう!気を付けて帰れよ」
リューガくんがブンブンって大きく手を振る。
羽崎はずっと俺の方を気にしていたけど、横断歩道の半分くらいのトコでようやく視線を前に向けて、軽く手を上げた。
羽崎は俺の恋人で、リューガくんと中山は友達……かなぁ?
………友達、作っちゃった。
ずっと、タブーにしてたのに。
でも俺も大人になったし、あの頃とは違う。
もう、平気だよね……?
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