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第16話 穿き替えられない
羽崎に多目的トイレに連れてきて貰ったのはいいんだけど、有り難いんだけど……
どうしよう。一緒に中に入られると、パンツ穿き替えられない!!
「あ、の…ね、羽崎」
「どうした?苦しいか?背中さすっててやるから」
あぅ…、男前……。
でも、その……背中をさすってくれてるのと別の手が、俺を支えてくれてて、腰に回されてて、その………
「羽崎、俺、座りたい」
「ん…そうか。ほれ」
腰を抱き抱えるようにして座らされた。
お尻に当たる感触は、硬質な便座のそれじゃなくて。
「あの……なんで?」
なんで俺っ、羽崎の膝に座らされてるの!?
「この方が楽だろ」
楽じゃないよぉ~~っ。
パンツの中気持ち悪いし、座ったらクチュって音がした。
聞かれてないか心配だし、こんな状態で抱っこなんてされたら落ち着かない!
「羽崎ぃ…、パンツ穿き替えるから、外で待ってて?」
もう切羽詰まって、恥ずかしいのも堪えてお願いした。
振り返って見た羽崎の顔が、硬く引き攣った。
眉間にしわが寄ってて、ちょっと怖い。
だけど、重ねて申し出る。
「おねがい。もう中ぐしょぐしょで気持ち悪い」
「……お前、さ」
羽崎は自分の頭に手をやって、ハァーっと溜息を吐きだした。
怒った…のかな?
せっかく心配してくれたのに、俺が外に出て、なんて言ったから。
「それ、……痴漢に?」
「えっ!?あ……う、ん……、それはいいのっ!俺が悪いから!」
え…うそ……、なんで羽崎が、俺が痴漢されてること知ってるの……?
あ、でも、もしかしてそうかなって思っただけ?
だったら俺、余計なこと口走っちゃって……
「あっ、あの、俺のことっ、気持ち悪いと思うんでっ」
「いつから?」
怒ったような低い声に詰問される。
「……2週間ちょい前からです…」
「で、お前は?知らない奴に触られて、簡単にイカされちゃってんのか?替えのパンツ用意するぐらいだもんな。毎日ヤられてんだろ?」
「……ごめんなさい」
怒られて、しゅん…と心が沈み込む。
俺、羽崎に嫌われちゃったかもしれない……。
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