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第18話 恋人みたい
我に返ると恥ずかしい………
羽崎の名前を叫びながら、その手の中に出してしまった。
羽崎が貸してくれた濡れタオルで綺麗に拭いて、替えのパンツを穿いたから、トイレットペーパーで適当に拭いてすぐに穿き替えてる普段よりも下着の中はスッキリしてるんだけど……。
羽崎に抜いてもらったから、そっちの意味でもスッキリ。
……って、それだよ!それが恥ずかしいんだってばぁ!
「用意できたか?」
多目的トイレは広いから、羽崎は少し離れたところで待っててくれてた。
「……はい」
「スッキリしたか?」
「………とっても」
「俺の名前呼んでイッて?」
「っ~~~~~!!」
バッと顔を逸らすと、笑いながら頭を撫でられた。
顔が回りこんできて、唇にちゅっと触れるだけのキスが落とされる。
う……、なんだか恋人みたいだな。
てーかホントに恋人なんだけどっ!
うーっ、お互い好き同士で付き合ってるわけじゃないのに、それなのに照れる~~っ。
「喉乾いただろ。声がちょい枯れてる」
「うん」
「行くか」
差し出された手を握って、歩き出そうとして、
「っ……!?」
「わっ、ぶね」
腰がストンと落ちた。
羽崎に支えてもらって、事なきを得たけど。
「なに?気持ち良すぎて腰抜けたか?」
低い声でくすりと笑われる。
「……うん…きもちよかった……」
嘘をついてもしょうがないから正直に申告すると、
「…そ…か……」
頭を優しくぽんぽん撫でられた。
なんとなく、顔が赤い気がする。
羽崎みたいな人でも照れたりするのかな?
「いつまでもここにいらんねェから、ベンチででも休んでくか」
カバンを両肩に担いで、俺のこともよいしょっと持ち上げてくれた。
「あっ、いいよ、羽崎。重いでしょ?俺歩ける」
「はぁ!?お前ちゃんとメシ食ってんのか?軽すぎて引くレベルだぞ」
「う……すみません……」
男に抱っこされたことがないからなのか、軽すぎて引くなんて言われたの初めてだ…。
「あの、ごめんついでに羽崎…」
「ん?」
「さっき、俺……勝手に下の名前で呼んで、ごめん。それから、変なことさせちゃって…」
火が出ちゃうんじゃないかってくらい熱くなった、真っ赤に染まってるだろう顔を、羽崎の肩口に当てて隠す。
熱いの、伝わっちゃうかもしれない。
恥ずかしくって、泣いちゃいそう。
「あー…、ごめんいらねェわ」
足を止めたかと思うと、羽崎は「っしょ」っと俺のことを抱き直す。
「ごめん、重い?」
「だから引くほど軽いって。何飲む?」
「水」
「もっとカロリー摂れ」
ポスンと音がして、落ちてきたペットボトルを屈んで取り出す。
傾きに慌てて、羽崎の首にぎゅっと掴まった。
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