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第19話 独占欲

何を飲むか訊かれたから水って答えたのに、ベンチに下ろしてくれた羽崎からスポーツドリンクを渡された。 「水…」 「いいからそれ飲んどけ」 ペットボトルのふたを開けてくれたから、仕方なくそれに口をつける。 嫌いじゃないんだけど、さっぱりしてるから今は水の方がいい。 でも、言われたから仕方なく一口飲むと、満足したのか頭を優しく撫でられた。 なのに口を離して見上げると、急にムスッとした顔をして隣に腰を下ろす。 「遼、お前さ……俺のこと名前で呼びたきゃ、勝手に呼べよ。お前は俺のもんなんだから、変なとこで遠慮すんな。んなことより、もう他の奴にヤラせんじゃねェぞ。体疼いたら、イかせてくださいって俺に言え。分かったな」 「え?…えぇ……??」 一気に言い切ると、腕も脚も組んでそっぽを向いてしまう。 「はねさ──」 「君たち?」 羽崎の座る逆側から声を掛けられて振り返ると、若い駅員さんが訝しげに俺たちを見ていた。 「もうとっくに学校始まってるよ」 「あ、あの…」 「すいません!」 説明をしようと口を開くと、それを遮るように羽崎が立ち上がり、駅員さんに頭を下げた。 俺の頭にぽん、と手を置く。 「こいつが具合悪くなってトイレ行ってたんですけど、歩けないんで取りあえずここ借りて休憩してました」 「えっ、具合悪いの?救護室に来るかい?」 「助かります」 羽崎は俺の手を引いて立たせると、さっきみたいにまた正面から抱きあげてくれる。 「荷物持つよ」 「ありがとうございます」 そして、カバンを2つ持って先導してくれる駅員さんの後ろを歩きながら、徐に口を開く。 「すいません、もしできたらで良いんですけど、うちの学校に電話してもらってもいいですか?」 「ああ、いいよ。君もハジけてるクチ?素行が良くないと生徒からの連絡じゃ疑われるかもしれないからね」 「こいつは真面目なんですけどね。成績もいいし」 ありがとうございます、って頭を下げる羽崎に続けて、俺も駅員さんにお礼を言った。 ていうか、俺が成績いいって……羽崎、知っててくれたんだ。 自分だって成績真ん中より上だし、真面目に授業に出てるくせに、ヤンチャしてるフリしちゃってさ。 そう言うとこ少年ぽくて、ちょっと可愛いかな…なんて、腕の中で揺られながらそんな乙女チックなことを思った。

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