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第30話 運命です
「紫藤君は、最終的には 羽崎君に抱かれたいんですよね?」
矢鱈と真面目な顔で、そう訊かれた。
抱かれるって………
朝のあれは抜いてくれたってだけで、一方的だったから受け身っぽくなっちゃったけど、俺からもしてたら友達同士でやる抜き合いっこみたいな……。
きっとみんな、友達とそういうコトしてるんだよねぇ?
俺は友達いなかったから、他にそういう経験ある訳じゃないけど。
だから、斗織に触ってもらってすごく気持ちよかったけど、それは別に抱かれたいからって事じゃなくて………
「キスはもう、相当数こなしているんですよね?」
「えっ、そっ!?そんなこと───」
「紫藤君、図書室です」
注意されて、慌てて声を潜める。
「あっ、あのっ、でも俺、斗織とは話したのも昨日が初めてで…っ」
「それでは運命ですね!」
小さな声ながらも興奮しているのが丸わかりのテンションで、級長に手を握られた。
「う、運命……?」
「ええ!君たち2人からは、初々しさを感じさせながらも、互いを想いやっている様子が手に取るよう、具 に伝わってきます。とても、昨日今日の関係じゃない」
「えと……男同士気が合ったら、そういう事もあるんじゃないかなぁ?」
このままじゃ恋愛事に結び付けられそうで、そっと訂正を入れてみる。
「僕は友達同士でキスなどしません」
「あ、それは、友達じゃなくて付き合ってるから」
「ええ。だからそこから、話を進めましょう」
級長は俺の手を放すと、人差し指でメガネのブリッジを押し上げながら、フッと笑った。
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