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第31話 精神分析官
付き合うことになったきっかけは?
初めてキスをしたのは?
そういう事を幾つも訊かれて、きっと話すまで許してもらえないんだろうな、って理解して、仕方なく全部正直に喋った。
「それでは、検証に入ります」
「はい……」
よく分からないけど、真剣な顔でそう言われたから真剣な顔で返す。
「初めてキスされた時はどうでしたか?」
「えっ…とぉ……、ちょっと乱暴にされたから文句を言ったら、すぐに優しくし直してくれました」
「君は、嫌ではありませんでしたか?」
「イヤじゃなかったです」
一体なんの検証をしてるんだろう?
なんだか、心理テストみたい。
…ん?じゃなくて、精神分析?
「今朝、羽崎君に触られた時はどうでしたか?」
また、嫌ではなかったかと訊かれたから、首を横に振る。
「お兄さんに痴漢されてた時も、この手が斗織だったらって思ってて……。だから本当に触られた時は、きもちよ過ぎて腰砕けになっちゃいました」
「そうですか」
級長、なんだか心理カウンセラーの先生みたい。
ついつい要らないことまで喋り過ぎちゃう。
「では、最後に。羽崎君の股間について、どの様に感じますか?」
「こ…かん……?」
甚く真面目な顔をしているから、ふざけてる訳じゃないと思う。
それに、そんな風にシモネタでフザケる人には見えないし。
だから俺も、真面目に答えなくちゃだろう。
斗織の…股間………
「え、と……、おっきかったです…」
「もう確認済みですか?」
「あっ、ちがくて!昼休みにっ、膝枕の時にズボンの上からでも分かって!」
「紫藤君、図書館です」
「ぁっ…、すみません……」
思わず興奮しちゃったのは俺だけで、級長は相変わらずクールな顔で分析を続けている。
「それで?」
「あっ、…うん、……俺の、斗織のみたいにおっきくないから、恥ずかしいなって……思いました」
「なるほど。分かりました」
分析結果が出たのか、級長はやがて徐ろに立ち上がり、ついてくるようにと俺を促した。
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