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第37話 発情期の犬
見ると、さっきのちっちゃな扉、……にじり口?
そこから出てきたらしい斗織の姿が見えた。おっきい体が窮屈そうだけど。
「カバンに入れておきます」
級長が行ってもいいと言ってくれるから、スクバを預けて斗織に駆け寄る。
すごいっ、すごいっ、かっこいい!
普段から凛然としててかっこいいのに、着物の斗織は更に大人っぽくてとっても凛々しい。
錫色の着物に黒の袴、襟元の瑠璃色が映えてキレイ。
足元は、純白の足袋に漆黒の皮草履。
う~ん、色合わせとかよくわかんないけど、とにかくかっこいい。
「どうした?」
頭をよしよしって撫でてくれる。
「斗織、出てきて大丈夫なの?」
「ああ。ちょっとならな」
「後で先生に怒られない?」
「俺が先生なんだよ」
ん?と首を傾げる。
「母親が茶道の家元で、俺も師範の免許持ってんの。んで、入学したときに顧問から、部員達に教えてくんねェかって」
「斗織、お茶の先生?」
「そ。お前も寄ってくか?俺が一服点ててやるよ」
「えっ……」
斗織が俺にお茶を点ててくれて、それから……
さっき絵で見ちゃったからか、想像が難しくない。
俺はお茶の作法なんて知らないから、上手にできなかったからって扇子でパシンってぶたれて、お仕置きされちゃうかもしれない。
斗織にシャツを肌蹴させられて、使ったばっかのまだ濡れた熱いシャカシャカで、俺のおっぱいをしゃかしゃかっ、て………
「やっ、だめぇっ」
皆の前で、恥ずかしいことされちゃう……っ。
「斗織のえっちぃ…」
想像したら恥ずかしくて、涙が滲んできた。
「………遼」
指で顎をクイ、と上げられる。
「お前、今何処でスイッチ入った…?」
「えっ……?」
あっ…れぇ……?
見上げた先の斗織、テンションふつー……。
むしろちょっと引いてる感じ。
ちょっ、俺だけ発情しちゃってスゲー恥ずかしいじゃん!
「……もっ、もぉっ、なんでもないよっ。斗織のばかっ!」
「誰が馬鹿だ」
くるりと踵を返そうとすると、手首を掴んで止められた。
後ろから腕の中に閉じ込められて、
「発情期の犬」
耳に声が入り込む。
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