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第41話 最後だから
……っぶなー。
スマホの電源をオフにして、自分のベッドに放り投げる。
あー、もう、危ない危ない。
他人と関わるなんて、慣れないことすんじゃなかった。
淋しさに気付いた途端、誰かに構って欲しいなんて欲求が噴き出しそうになって……
だめだなぁ、俺。
やっぱり、斗織とは別れなくちゃあ……
3ヶ月、保たなかったな。
最短記録になっちゃうかな、斗織。
ごめんね。
食べ終わったお皿を下げて、洗い物をする。
お米を研ごうとして、
……あ、斗織の分のご飯も炊かないと…。
お米の量を増やした。
最後だから、とびきり美味しいのを作ろう。
玉子焼き、いっぱい食べるかな?
いつもの倍量作ろうかな。
斗織、生姜焼き好きかなぁ…?
妙に張り切って食後のデザートにって、エッグタルトまで焼いちゃった。
要らないって言われたら、自分で食べればいいよね。
だから持ってくのは1個だけ。
勉強して、お風呂から出て、ベッドにゴロンと転がる。
スマホを起動させると、斗織からと父さんから、いくつかメッセージが届いてるようだった。
『今日も遅くなるから、先に寝ていなさい』
「はぁい。かしこまり~」
ほぼ一人暮らしは独り言が増えて困るなぁ。
『はい。
お仕事がんばってね。』
コピペみたいな文章を打って、送信。
もう一度、スマホを放り投げた。
ピカピカって光ってるランプは無視して、電気を消して。
益々光を強くする受信の合図に、
「明日見るから、ごめん」
ひっくり返して光を隠すとまぶたをギュッと下ろして、俺は眠れない夜を予感したのだった。
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