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第43話 柴藤家の朝-2
なに、俺にカノジョって……?
嫌味ですか、父上。俺、女の子に全然モテないんだけど……。
「お弁当2個、誰の分?」
あ……、斗織の分だ、それ。
「カノジョいないよ。それ、カレシの分」
「ああ、カレシ。………っ!? ……遼司? まさか、本気でお嫁さんに……?」
父さんは、何とも言えない表情で固まった。
心配させないように、ヘラって笑ってみせる。
「嫁になんて行かないよ。ただ俺、可愛いでしょ? 男の子がほっとかない~、みたいな」
「確かに、遼司はアイドルみたいに可愛いからね」
父さん……。流石にそれは親の欲目すぎます……。
「……いや、しかし……まさか、父さんが離婚した所為で、女の子を……」
「違うから! 大丈夫!」
マイナス思考に陥りかけた父さんを、慌てて引きずり上げる。普段は前向きなこの人は、離婚した母さんのことでだけ、急に後ろ向きになるんだ。
「それにねぇ、安心していいよ」
イスに座って、俺もフレンチトーストにいただきますの手を合わせる。
「もう今日にでも別れるから。そんで、今度の引っ越し先で可愛い女の子探すよ。問題はさぁ、俺より可愛い女の子がいるかってことだよねぇ。次は福岡や秋田がいいなぁ」
ヘヘッと笑ってみせると、父さんはなんとも言えない表情をして、寝癖のとれてない髪をガシガシとかき混ぜた。
「……遼司、高校もあと1年だろう。お前はしっかりしてるし、残るなら来年も此処に───」
「確かに俺はしっかりしてるけど、父さん一人になったら暮らしてけないでしょ。生活能力皆無、一人暮らし不適合者」
「遼司、父さんなら…」
「えーっ、俺は父さん居ないと淋しいのに、父さんは淋しくないのかよぉ。最近毎日遅いしさぁ、俺淋しくて干からびちゃうかも知れないよ!」
「遼司、淋しいのか…!?」
「そーだよぉ。父さんの方こそ、カノジョでも出来たんじゃないのー?」
それならそれで、父さんが淋しくないなら、俺は全然構わないんだけどね。
そう言って笑ってみせると、
「遼司……っ!!」
頭を抱き締められた。
父さんに抱き締められるの久し振り。小学生の時ぶり。
朝から暑っ苦しいなぁ。ふふっ、仕様がない人だ。
「そんなことより父さん、そろそろ時間」
「おっ、と。用意してくるよ。ありがとう、ベイビー」
誰がベイビーだ、誰が。
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