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第44話 両親のこと

十数分後、高級スーツに身を包み、髪を整えてビシッとキメた父さんが、爽やかに仕事に出掛けて行った。 起きたてと同じ人とは思えない。 仕事の出来るオトナの男って感じで、我が父親ながらかっこいい。 俺もそろそろ用意しなきゃ。 整髪料で髪を整えて、……う~ん、父さんと何が違うんだろう?まだ子供だから? 鏡に映る自分の姿に首を傾げる。 俺の髪、なんかフワフワしてる。 色もなんか薄いし。 この髪のせいで、地に足着いてないように見られちゃうんだよなぁ。 父さんは俺と違って黒髪で、背も高いし。 むーん…… てっぺんの髪を指で玩びながら、しばらく考え込む。 父さんに、似てないわけじゃないんだよなぁ…。 どことなく…は似てるよね。 やっぱり俺の顔、あの人寄りなのかなぁ。 やだなぁ、母さんに似てんの。 父さんと離婚した母さんは、バリバリのキャリアーウーマン。女社長。 派手で、行動的で、野心家で、男勝り。 良く言えば竹を割ったような性格で、悪く言えばがさつ。 昔お風呂に入れてくれてた時も、背中ごしごしを超えてゴリゴリって感じで擦られて、すごく痛かった。 もちろん嫌いじゃないけど、…ちょっと苦手。 父さんは、生活能力皆無で手は掛かるけど、ビシッと決めるとめちゃくちゃカッコいい。 対外モードの父さんは、俺の理想のオトナの男だ。 その分、私生活ではあれだけど……。そのせいで母さんに見捨てられたりしたんだけど。 それでも俺、父さんの面倒見るの、嫌いじゃないもん。 あんまり家にいなくて淋しいけど、いる時はいっぱい甘えさせてくれる。 だから、周りの人たちが、「親父ちょームカつく~」とか話してるの聞くと、うちの父さんちょーカッコよくてちょー優しいよ、って自慢したくなる。 授業参観に来てくれる父さんにいいとこ見せたくて勉強頑張ったし、女の子や観に来たお母さんたちが授業よりも父さんが気になってチラチラ見ちゃうのが誇らしかった。 俺も父さんみたいな自慢の父親になりたい!ってのが夢。 なんだけど……… 俺、ちゃんとおっきくなれんのかなぁ? 16歳、そろそろ17歳。 男らしい顔つきや体つきになっても良い頃合いだと思うんだけどなぁ。 鏡の中の俺は、……少年っぽい?女っぽい? …う~ん……、なんか違う。 中性的、かなぁ? その時ふと、部屋から音楽が流れ聞こえてきた。 耳を澄ませると、それが出掛ける時間にセットしておいたアラームであることに気づいた。 「やばっ、早く行かないと!」 髪のセットの途中だったことを思い出し、鏡に視線を合わせる。 ………って、髪の毛跡付いちゃってるし! 頭のてっぺんにマヌケなくるくるがぁっ!! 鏡の中に映るのは、焦ってる俺の頭頂部に、くるくるに巻かれた髪の毛一束。 めめっちじゃん、これ!! うふふふ~って笑いながら歩いてる、たまごっちの仲間を思い出した。 うふふって、暢気か!俺の今現状、それどころじゃないのに~~っ! 慌ててドライヤーを当てながらブラシで梳かすけど、ブラシが離れるとまたくるくると戻って元通り。 もう1~2分経っちゃった!? 焦りの色が濃くなっていく。 うわーん、どうしよ、どうしよっ、直らないよぉっ!!

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