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第45話 アホ毛

結局てっぺんくるくるのまま、家を出た。 やむを得ない。恥ずかしいけど、待ち合わせに遅刻するよりよっぽど良い。 斗織、改札の前でって言ってたっけ。 待ち合わせ時間5分前。 いつもより速く歩いたから、余裕をもって駅に着けた。 ホッと安堵の息を吐いて、指定場所へ向かう。その道の途中。 「遼!」 前方から斗織の声がした。 「あっ、ごめん、遅くなって」 「いや、俺も今着いたとこ」 駆け寄ると、デートの待ち合わせ定番、お決まりの返しをくらう。 「つーかお前のこと追い越したんだけど、気付かなかったな」 社交辞令じゃなくて、ほんとに今着いたとこだったらしい。 「えっ、うそ。全然わかんなかった」 「お前、周りのこと気にして見ないだろ」 「うー…ん、そうかもね」 周りを気にして見ない、と言うよりは、周囲に興味が無いと言うか。 まあ、それって良くないことなんだろうけど、あんまり興味を持ってもすぐに引っ越しちゃうし、必要最低限の場所さえ把握してれば困らないって生活のせいもあるのかも知れないな。 勿論、一番の原因は性格だってのは重々承知の上で。 「つーか、周りのこと以前に、自分のことにも無頓着か」 斗織が苦笑して、俺の頭のてっぺんに触れた。 「あっ…」 髪を引っ張られる。 「なんでここ、クルクルしてるんだよ」 「ぁんっ、違うよ、それ、直んなかったの!俺ちゃんと直そうとしたもん」 うぅ~~っ、斗織の手の触れてるとこが、微妙に擽ったい。 てか、ちょっときもちいい……。 なんでだろ…。 なんだかトロンとしてきて…… 腕に顔を擦り付けると、その瞬間──殊更強く髪を引かれた。 「イタいっ…!」 お陰で、いやその所為で、パチっと覚醒した。 「よし!」 頭をぽんぽんと撫でられる。 「なに?よしって」 「クルクル、伸ばしたぞ」 「え?直してくれたの?」 「あー……」 斗織は小さく唸り声をあげて、頭の上を見る。 そして、俺からそっと視線を逸らした。 「立った。そりゃもう、ピコンと見事に」 「えっ、な、なにそれ!?」 「あれ、なんつったけ?…アホ毛?」 「アホ毛って…!」 「あー……、可愛い可愛い」 ヒドい棒読みで頭を撫でられた。

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