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第46話 直接対決
斗織についてホームに上がると、ちょうど電車が入ってくるところだった。
早めに着いたはずなのに、ギリギリになっちゃったな。
電車が停まるのを待っていると、斗織が振り向いて、ここ?と訊かれる。
「乗ってるとこ?いつもここだよ」
「そうか」
ドアが開いて、斗織が先に乗り込んだ。
俺はそれに続いて…。いつも通りついお兄さんの姿を探してしまう。
「おはよう」
先に見つけられて、声を掛けられた。
「おはようございます」
挨拶を返して、お兄さんが端に寄せてくれようとするから、どうしようかと彼を見つめる。
今日は俺、斗織と一緒だし、前触られるのも、もう……
困って動けずにいると、突然肩を強く抱き寄せられた。
「お前はこっち」
そいつ?と耳元で囁かれた。
痴漢のお兄さんか?ってこと?
うん、と頷けば、つり革に掴まってない方の腕の中に抱き込まれる。
「悪いんですけど、次の駅で降りてもらえますか?」
お兄さんの息を飲む音が聞こえた。
隣の駅で降車して、ホームの隅に3人で寄る。
朝のラッシュ時、人が多いから、一番端っこの人の少ない方。
お兄さんの顔が強張ってる。
「アンタ、こいつに痴漢してましたよね」
斗織の声が、酷く低く響いた。
「君…は…?」
「恋人です」
「恋…人…?」
「ああ、因みに、俺がカレシな」
背中から抱き締められて、顔を振り返らせるとちゅっと鼻先に口付けられた。
お、おぉっ…新しい。初めての、鼻ちゅーだ……。
「昨日こいつのモノ触ったとき、感度良かっただろ?そん時こいつ、俺に触られてる時のこと思い出してたんだってよ」
ちょっと違うけど、そう遠くはない。
斗織にも考えがあるんだろうから、黙って成り行きを見守る。
お兄さんは見て分かるほどに、顔面蒼白だった。
「で、アンタはこいつに痴漢してた。知ってる?痴漢って犯罪なんですよ?」
「……好き…だと、思ったんだ…」
「え?」
聞き返したのは声が聞こえなかったからじゃなくて、理解が出来なかったからだった。
「いつも、笑顔で挨拶してくれて、触っても嫌がったりしないで……僕のことを、好きなんだと思ったんだ……」
「えっ…」
えっ、うそ、俺、そんな思わせ振りな態度とってたの!?
「初めに間違えて触ってしまった時も、気持ちよさそうな声をあげられて……」
「ちっ、ちがっ…」
「こいつは身体がエロいから、本人の意思とは関係無しに反応すんですよ」
エロ…っ!?
違うもん、エロくないもん!
思いを込めて睨み上げると、今度は鼻をパクンと甘噛みされた。
そのままてっぺんの髪の毛を一束、根本からスーッと摘んで指を滑らされる。
ゾクゾクって身体が震えて、力が抜けてく……。
「ふゃぁんっ…」
「ほら、エロいだろ?」
斗織のせいで、また変な声が出ちゃった……。
顔を覗きこまれてムッと唇を尖らせると、今度はそこにちゅってキスされた。
俺は多分、斗織のキスに弱くて……。だからもう、怒れなくなっちゃう。
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