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第47話 好きでした
「……斗織が変なんだもん…」
「は?」
「だから、斗織が変になっちゃう電波を出してるの。ふつーに髪の毛触られるだけで変になっちゃうの、おかしいじゃん…」
「だったらお前もなんか変なもん出してんだろーが」
「変なもん、なんて…出してないと思う……」
「だったら俺だって電波なんて出してねェよ」
それはウソだ。
絶対斗織は、変になっちゃう微電流とか出してるもん。
だから女の子にもモテんじゃないの?
見上げて、ウソだウソだって視線で訴えてると、
後ろから、はぁ……と小さな溜息が聞こえた。
すっかり忘れてた。お兄さんの存在。
「あの…」
「ごめんなさい!」
頭が膝についちゃうんじゃってくらい、盛大に頭を下げられた。
「謝って済む話じゃないってことは分かってます。だけど、ごめんなさい!!」
「いやっ、だってそれはっ」
「だけど、好きだったんだ。───好き…だったんです……」
斗織が警察に突き出すかと訊くから、とんでもないって首を横に振った。
だって、勘違いさせちゃった俺が悪いってのもあるし。
そう伝えると斗織は、確かに、と薄く笑った。
確かにって、ちょっとヒドイ。
俺だって、勘違いさせようと思ってワザとやってた訳じゃないのに。
駅に新たに電車が入ってくる。
斗織は俺の手を引いて、そこから移動しようとする。
俺は斗織を引き留めて、お兄さんに向かって、大きく頭を下げた。
「今まで守ってくれて、ありがとうございました」
「えっ、そんな!頭を上げて!」
お兄さんがアワアワしてる。
やっぱり、悪い人なんかじゃない。
俺が、勘違いさせちゃっただけ。
「俺、貴方のことが好きでした。恋愛感情じゃないけど、それでも、好きでした」
「っ………うん……ありがとうっ」
涙の滲む顔に、へらっと笑って見せる。
俺はそんなに賢くないから、平気。
嫌だったことより、嬉しかったことの方が記憶に大きく残っちゃうから、大丈夫。
今だってお兄さんのこと、好きだって思ってるよ。
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