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第49話 発情禁止
恥ずかしくって、斗織の三歩後ろを歩く。
「……遼」
呆れた声で名前を呼ばれた。
「はい……」
手招きされたから、小走りで追い付いて隣に並ぶ。
だって、だって、これからお前の身体を触りますよ! って言ってる人の隣に自ら行くなんて、なんだか恥ずかしいじゃないかっ。まるで、期待してるみたいで……。
だから呼ばれるまで後ろを歩いて待ってたんだ。
昨日 級長に持たされた本、結局全部読んで色々知識も付けちゃったし……。
エッチなこと……って、詰まるトコ何をするのか。全然知らなかったら、なんか恥ずかしいってだけで済むけどさ。
知っちゃったんだもん。
だからね、どうしたって想像しちゃうワケなんですよ。うぅ……。
俺相手に、ベロチューとか、おっぱい舐めたりとか、纏めて扱くの…とか。
したいのかなぁ、斗織……?
俺は、したいかしたくないかって言われたら、……したい…方に傾きつつあるわけだ…けど……。
そっと見上げると視線に気づいたのか、頭をぽすんと撫でられた。
……あっ。
斗織め……、やっぱり掌から きもちいい電磁波放出してるじゃん……
「ん…っ、ふぁ……」
その心地よさに、思わず甘い吐息を漏らしてしまう。
「遼」
「はい」
見下ろす視線に操られるように頷くと、
「自重」
おでこをペシッと掌で叩かれた。
「いっ…たーい! 暴力反対っ!」
「発情禁止」
「してないよっ」
「してただろ」
「じゃあ、斗織も変な電波出すの禁止ー」
「出してねェよ」
「出してんの!」
「あー、はいはい。電波シャットダウン」
そう言いながら、首元をスルリと撫で上げてくる。
「…ゃぁん」
ゾクゾクってして、また変な声が漏れた。
「ほら、電波出てなくても発情してんじゃねェか?」
指先で喉を擽られて、力が抜けてく。
「出てるってばぁ。
大体なにそれ。長身を活かした黒のロングコートとか! まだ高校生のクセして、大人みたいでかっこよすぎんじゃないですかぁっ。
斗織がそんなだからいけないんじゃん。俺が変なんじゃないもん…」
声にも力、入んないし。
斗織のばか……。
訴えるように見つめると、斗織はフッと笑みを零し、喉から離した手を俺の頭にぽふんと置いた。
「お前こそグレーのPコート、可愛いぜ」
顔を覗き込まれる。
「っ……俺、別に褒めたつもりないんだけどっ」
「俺も。思ったこと言っただけだからな」
「………!!」
斗織に、可愛いって言われた………
あっ、違うけど! ちゃんとわかってるけど! コートのことだって。
……んでも、嬉しいなぁ……。
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