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第50話 マンガの王子様
ゲンキンなもので、気持ちがぱぁっと明るくなって、笑いが込み上げてきた。
「ふふ~っ、とーるぅ」
斗織の腕、コートの生地にきゅっと掴まる。
「遼、シワになる」
「あっ、うん、ごめん」
「から、こっち」
コートから離した手を、握られた。
「冷てっ。手袋しろよ、お前」
小さく笑って、握ったまんま俺の手を、自分のコートのポケットに突っ込む。
ふぁあっ…これ、昨日借りた本にあったシーンだ!
斗織、スゴい。ナチュラルにマンガの王子様!?
「あったかいか?」
「あったかいです……」
「お前、時々敬語になんだよな。可愛い」
「ひゃっ」
「なんだよ、ひゃって」
顔を覗き込んで、甘い笑み。
───マンガの王子様~~~っ!!
モテ男怖い~~っ!
これ、素でやってるんだよね?照れが無いもんね!?
てか、今度はリアルに俺のこと可愛いって言った!!
斗織、俺のこと実は可愛いって思ってたってこと!?
う~~、照れる~~。俺ばっか恥ずかしい~っ。
真っ赤な顔で悶えてると、
「…あー……」
斗織が唸り声を上げた。
見上げると、赤く染まった顔を逸らされる。
「悪ィ、妙なこと言った。忘れろ」
「えっ?やだ…」
「忘れろ!」
「やだーっ」
ここに来てのテレ顔とか、なに狙いなのこの人!?
コートのポケットから手を抜いて走って逃げると、すぐに追い付かれた。
腰に手を回されたかと思うと、脇挟んで運ばれる。
「なにこれーっ」
「俺ばっか恥ずかしいんじゃ割に合わねェだろ。お前も辱めにあえ」
「えっ、やだやだっ。斗織のえっちー!」
「騒ぐな!余計俺が恥ずかしい!」
それから約1分間、俺は校門まで脇抱っこのまま運ばれて、昇降口の階段前で優しく下ろされた。
って、優しくって……惚れちゃうからやめてください。
もっと乱暴に放り投げるくらいの感じでいいよぉっ。
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