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第63話 いつものメンバー

ちゅっ…ちゅく… んぅ…?きもちいい……? れろ…ちゅ…はむ… 唇を舐められたり、吸われたり。 愛しげに食まれる感触に、ふぁぁって背筋がゾワゾワする。 チュッ…て名残惜しげに唇が放されて、耳朶から首筋を伝う指をハシ、と掴まえた。 「とぉる…?」 「目、覚めたか?」 ベッドサイドに腰掛けて、肘を突いた斗織が、顔を覗き込んでた。 斗織は繋がった俺の指を口元へ運ぶと、チュッてわざと音を立てるように口付ける。 「っ!?………えっち」 赤く染まる顔を隠しながら文句を言うと、 「どっちが」 笑いながら、頭をわしゃわしゃ撫でられた。 「良く寝てたな。寝ぐせついてんぞ」 「あーっ、そんなんしたら寝ぐせどころか乱れちゃうよぉっ!」 「いや、なんとかこれで誤魔化しき……れねーか」 「もーっ、斗織は朝から、…もーっ」 朝もくるくるの毛 アホ毛に進化させられて、今も寝ぐせが、きっと天パみたいに……。 「そんなことより、5時間目終わったぞ」 「えっ、ほんと?」 なら急いで戻らなくちゃ。 必死に手櫛を通して髪を整えていると、保健室のドアがガラッと開く音がした。 「あれ?マナちゃんいなーい。トオルとリョーちんは?居る?」 リューガくんの声だ。 「りぅがくん、ここ」 声を掛けると、斗織が小さく舌打ちをした。 「おっ、ほんとに具合悪かった?ダイジョブ?リョーちん」 カーテンが外から開けられると、斗織の顔が益々不機嫌なものになる。 可笑しくなって笑いながらほっぺを突付くと、溜息を吐かれる。 だけどそれは呆れたり不満があったりするものではなくて。 斗織はすぐに口元を緩めて、しょーがねェな…って頭を撫でてくれた。 「マナちゃんはヒロセンに呼ばれて出てったけど」 「廣瀬先生ですか。…なるほど。それも有りかと」 リューガくんの背後から級長が顔を覗かせる。 それも有りって……きっと、BL方向にだ。だって級長、ニヤリって笑ってる。 マナちゃん先生可愛いから、きっと『貴重な受け要員』なんだ。 「紫藤、大丈夫?」 その更に後ろから、中山が顔を出した。 最近の、いつものメンバーってヤツが揃った。 「皆で迎え来てくれたんだ。ありがと」 お礼を言うと、なんでか斗織の背中に隠される。 「遼、髪は直ったのか?」 「あっ、ううん。変?ボサボサ?」 尋ねると、振り返って眉をしかめられた。 「あ?いつもそんなだろ」 ヒドい。いつもちゃんとブローして来てるのに。 「寝ぐせですか?……まあ、平気だと思いますよ。授業もあと一時間で終了ですし」 級長が斗織の陰から覗き込んで、そっと目を逸らした。 直ってないってことですね。そうなんですね。 「それよりも、もう予鈴が鳴ります」 言ってるそばから、本鈴5分前を知らせるチャイムが鳴り始める。 「リョーちん、戻んぞ」 リューガくんがバアっと派手にカーテンを開いて、 「遼、行くぞ」 斗織が手を差し出してくれて、 級長が斗織の座ってた丸イスを戻して、 中山がドアを開けて待っててくれた。 俺は、ほんの数日前までは無かったこの風景を見ながら、フッと肩の力を抜いて皆と向き合う自分がそこに存在する事を、とても不思議に思っていた。

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