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第67話 中山のこと

斗織の代わりに、リューガくんが手を振り返してくれた。 あっ、リューガくん、ポテト食べながらアップルパイも持ってる。 いいなぁ、俺もアップルパイ、買ってくれば良かった。 「で、柴藤君。次は中山君ですか?」 「あっ、うん。えぇと、中山は……」 リューガくんの隣、斗織の反対側に座った中山を見ると、心配そうな顔で会釈された。 つられて頭を下げる。 うぅ…ん?なんか、変な感じだ。 「俺がどう思うかじゃなくて、中山から見て、ね…」 「はい」 「俺……、邪魔なんじゃないかなぁ…?」 「……………」 「きぅちょう?」 いつまで経っても相槌も打ってくれないから心配になって顔を上げると、級長は眼鏡のブリッジと口元を同時に押さえながら、固まっていた。 目の前で手を振ると、瞬きをひとつ。 ようやく黒目が再始動する。 「柴藤君、それは……どういう事か訊いても?」 「あの、俺のことじゃないから、口外しないって約束してくれる?」 「ええ、勿論」 「じゃあ、あの……多分なんだけどね」 長い前置きをしてから俺は級長に、中山は斗織のことが好きなのだと思うと伝えた。 級長は勘繰りもしていなかったようで、吃驚したように目を見開いた。 「だから本当は俺のこと、邪魔なんだろうなって思うんだ。でもね、中山は優しいから、隣の席の俺と気まずくならないようにって、仲良くしてくれようとしてるんじゃないかなぁ」 「………それは…なんと言うか……、新しい…解釈ですね……。紫藤君ならではの発想と言うか…」 「俺、今褒められてる?」 「けなしてはいませんが、褒めてもいません」 級長が飲み終わったカップを掴んで立ち上がるから、慌ててアイスティーを空にした。 Mで頼んだけど、Sサイズで充分だったかもしれない。 級長は、通り過ぎがてらリューガくんの肩を一つ叩くと、そのまま階段を下りて行ってしまう。 その背中を追いかけていると、斗織に「もう終わったのか?」と訊かれた。 ちゃんとは解決してないけど、相談は終わったし……。 うん、と頷けば、よし、と頭を撫でられた。 全部がスッキリ晴れたわけじゃないけど、級長に任せておけば大丈夫、…なのかな? リューガくんにも後でこっそり訊いてくれるって言ってたし。 店を出ると、一足先に外に出ていた級長が、道路端に寄って俺達が追いつくのを待っていた。 「級長、何処でベンキョーすんの?」 リューガくんがワクワクの表情で訊ねる。 勉強、好きじゃないっぽいのに、級長に教えてもらえるのが楽しみなのかな。 「僕の家で構いませんか?駅向こう、徒歩5分程度です」 「えっ、マジ?スゲー、行く行く~」 おおっ、もうお家にとか誘ってる!! もしや、付き合う前からイチャイチャしちゃうつもり!? あ、でも手を出すなら、ちゃんとお付き合いしてからの方がいいよって、級長に伝えたほうがいいかなぁ? 女の子じゃないけど、そこのとこはシッカリしてもらわないと!! 級長に借りた本、付き合う前にキスしちゃうお話、多かったもんね。 「ですが、その前に。大豆田君」 「ん?なにー?」 えっ、告白!? もしやこのタイミングでの告白タイム!?

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