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第75話 先生の過去

【マナちゃんSide】 一也さんに初めに会ったのは、高校1年生の春だった。 入学した学校で、一也さんの弟の羽崎 大和(はねさき やまと)と同じクラスになって、なんかの授業で同じ班になって、なんだったかもう覚えてねーけど課題をやりに羽崎家の屋敷にみんなでお邪魔して。 そこで、「いらっしゃい」って迎えてくれた優しそうな医大生に、どうしてだか矢鱈に興味をそそられた。 黒髪で長身、だけど腰が低くてほんわかしてて、近寄りづらさのひとつも感じさせない。 大和は見た目は何処となく一也さんと似てるけど、どっちかってーと荒っぽいタイプ。や、どっちかとか無くただただ荒々しい…が正解か。 脚をガッと100度ぐらい開いて座るし、下ネタ好きで、結構下品。すぐに人のことどつくし、寝起きの顔はマジ兇悪だ。 今じゃ立派にお医者様してるけど、当時の大和ときたら、メスを持たせりゃ『手術』じゃなくて『斬殺』、『診察室』じゃなくて『拷問部屋』の方が言葉的にはしっくり来ると、同級生の誰もが思う。 対して、一也さんは外科医だけど、見た目イメージ的には小児科のやさしい若先生。 「はい、だいじょうぶ、痛くないよ~。よーし、がんばった。いい子だったね」 って注射で泣いた子に、よしよしって頭撫でて慰めてる姿が容易に想像できる。 まあ実際はメスを片手に人肉切り裂いたり、人体に針をぶっ刺して縫い合わせたりしてるらしいから、人って見た目じゃねーよなぁ。 それはさておき、その日の作業の途中の話だ。 トイレを借りた帰りに俺は案の定、広い屋敷内でがっつり迷った。 安定の方向音痴の所為じゃない。大和が先に戻っちまったのが原因だ。 「あーっ、分からんっ!」 誰にも遭遇しないし、帰り道も分からなくなったし、下手に動けば更にどこかに迷い込みそうな広い家の中。 つか、そもそもこんな道あった?人外の棲家に通じてるとかねぇよな、この武家屋敷…。 ───よし、仕方ない。いや、別に怖いわけじゃない。なんか、他人が入っちゃいけない場所に踏み込む危険性を考えたら、そうするのが一番だろう。大和の親にも悪いしな、うん。 だから暫くここで、助けを待とう。 その内誰かが探しに来てくれるだろうと言い聞かせて、その場にしゃがみ込んだ。 大和と同じ制服着てるし、誰かに見つかっても不審者扱いされない筈。 そうと決まればただ座ってんのも暇だし…………寝るか。 広い廊下に手足を広げて大の字に寝転んだ。 つか、どんだけだよ。こんだけ何処もぶつかんねーとか、奇跡だな、奇跡。 広すぎんだろ、奇跡の廊下。 自分が人よりコンパクト設計なのには目を瞑って、ついでにホントに目も瞑って、大和か誰かが探しに来るのを待つ。 携帯持ってくりゃよかった、マジで。 ・・・・・・・・・ 暫くそうして転がっていると、トントンって、誰かが廊下を歩いてくる振動が響いた。 片目を開いてそっちを見る。 「えっ……さっきの、真中君?」 この声───大和のお兄さんの一也さん!? 慌てて起き上がろうとすると、向こうも慌てた様子で走りこんで来た。 「大丈夫?真中君、具合悪いの!?」 「あ、いや……」 やっぱり医学部に通おうなんて人は記憶力もいいんだな。 さっき会ったときに順に苗字を名乗っただけで、もう名前覚えてるなんて。 なんでか急にドキドキしだした胸を押さえながら、冷静にそんなことを考える。 するとその動作に反応した一也さんが、身体を支えるように背中に手を回して、俺の胸元を掌で押さえた。 「胸部が苦しい?」 「ひゃんっ」 んなっ……なんだ今の声は!? 「痛かった?この辺かな?」 掌の感触が胸元を撫で上げて、指先が控えめな突起をコリッと擽る。 「んっ…」 「ここだね。痛い?苦しい?」 どんな感じ?と聞きながら、乳首を擦られたりやんわりと押されたり。 そんなつもり無いんだろうな。でも…… 一也さんの手の感触は、優しくて、吸い付くようで、なのにちょっと硬くてごつごつしてて、俺たちみたいな中途半端な子供混じりの男じゃなくて、大人の男の手って感じ…で……… 「ん……あぁっ…」 ぼんやりと、気持ちよくなってきた。 「えっ……真中君…?」 俺が変な声を上げたからか、一也さんは手の動きを止めて俺の顔をじっと見つめる。 離れていったその手を掴んで、もう一度胸へと導く。 「きもちいーの…もっとぉ」 「え……、っ?!」 ボボボッと、一也さんの顔が赤く染まった。 自分が俺の乳首を弄っちゃってたこと、今頃気づいたんだろう。 「先生……俺、変なんです…」 その顔を見上げながら、医者に言うように伝える。 「体が熱くって、おっぱいの先っぽと、ここも……腫れてるの」 「えっ…と、それ、は……」 俺がまだ何にも知らないウブな子供とでも思ってるんだろうか。 一也さんは申し訳なさそうに眉尻を下げると、俺の背中を優しく撫でてくれる。 確かにただの耳年増、実際何が有ったわけでもないけどさ、俺だってなんも知らないわけじゃない。 「一也さんが俺のおっぱい玩ぶから勃っちゃったんだもん。だから一也さんが責任取って、俺のここも気持ちよくして?」

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