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第82話 お風呂上り1
【斗織Side】
一番風呂を頂いて、寝着の浴衣に着替えて出ると、ご機嫌な遼が矢鱈笑顔で懐いてきた。
聖一郎さんに急かされて漸く、俺から離れて風呂に向かう。
残された俺達は、なんだか気まずい。
そう言えばうちの父親、入婿みたいなもんだったな…と思い出す。
もう祖父母は亡くなってはいるが。
……スゲェな、父さん。
これからはもっと尊敬しよう。
そんなことを考えていても、過ぎた時間は僅か3分。
遼のヤツ早く帰って来ねェかな…と白のクッションに正座をしながら、流れるテレビ番組を眺めた。
それから約5分後、髪も乾かさずに遼が飛び出してきた。
「斗織!帰ってないよね!?」
必死だな。
「帰ってないよ。父さんが引き止めておくから、安心して髪を乾かしておいで」
聖一郎さんが苦笑しながら遼を脱衣所に追い返す。
「と言う訳だから」
ふわりとした笑みを向けられて、こっちも苦笑を浮かべて応える。
「すみません。泊まらせて頂きます」
「いいえ。こちらこそ狭くてすまないけど、遼司と一緒に寝てやってね」
思い掛けない聖一郎さんの言葉に面食らう。
「……それ、いいんですか?」
「あの子がこんな風に誰かを求めるのは、久し振りだからね。父親としては、叶えてあげたいでしょう?」
「それって───」
「とおるーっ!」
脱衣所の扉が勢い良く開き、遼が走りこんできた。
「髪の毛乾かした!」
膝に乗り上げて抱き着いてくる。
苦笑してお風呂に向かう聖一郎さんに「いってらっしゃ~い」と手を振ると、俺の胸にぎゅっとしがみついた。
俺を見上げてへらっと顔を緩ませると、
「んーっ」
と言いながら目を瞑る。
これは…まあ、キスを強請ってるんだろうな。
軽く唇を合わせて、すぐに離す。
遼は肩透かしを食らったような、物足りないと言いたげな顔をしてもう一度目を閉じた。
「とおるぅ、もっとスゴイの…」
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