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第83話 お風呂上り2
【斗織Side】
つか、訳分かんねェ。
さっきまでコイツ、俺そっちのけで父親フィーバー入ってなかったか?
それが、風呂から出てきた途端、今度は父親に素っ気なくなってこっちに引っ付いてくるとか………
遼を抱き上げて、ベッドに仰向けに下ろした。
少し嬉しそうな顔をした遼の額を軽く小突く。
「イタい……」
これでも、マメにやる時の10分の一程度の力加減にしてんだけどな。
「ほら、いいからもう寝ろ」
「え?…なんで?」
「なんでじゃねェ。聖一郎さん居るとこでイチャつけっか」
「それなら大丈夫だよ。父さんお風呂長いから」
長いから───なんだ!?
風呂長かろうが、出たらすぐのこんな吹きっ晒しの場所で、コトに及べるか!
しかも、互いに初めての状況で、気配に怯えながら探り探り進めるとか、ねーだろ……。
テメェの部屋があるならともかく。
「聖一郎さんにも悪ィだろ。親いるトコじゃヤんねーぞ、俺は。ヤりたきゃうちに泊まりに来い」
「えっ、今から?」
「この能天気!」
頭をポカリとやる代わりに、ベッドに寝転んで遼の身体を抱き寄せた。
「ほら、抱いててやるからとっとと寝ろ」
「んー…。じゃあ、おやすみのちゅーだけ」
さっき一度したが、それくらいは仕方ないかと唇を寄せれば、下唇にガブリと噛み付かれた。
「っ……」
驚いて見つめれば、悪戯っ子のようにくすりと笑う。
「ふふ~っ、おやすみなさーい」
………この、小悪魔が!
頭を抱き込んで背中を規則的に叩いていれば、テンションMAXだった遼もいつの間にか寝息を立てていた。
起こさないようベッドを抜け出し、すぐ傍に転がる白いクッションの上に座る。
座布団と違ってフワフワしているせいで座り心地は良くないが、綺麗に座れない程でもない。
ガチャリと音がして、脱衣所の扉が開いた。
「っ……斗織君、まだ起きてたの?」
俺に気付いた聖一郎さんが、ベッドでぐっすり眠ってる遼の姿を確認してから訊いてくる。
「はい。流石に同じベッドはどうかと思って」
「ああ、そうだよね。感覚的には好きな女の子と一緒に寝るってことか…。それは、男としては辛いね」
そういう意味では無かったんだが、聖一郎さんが納得したように微笑むから、訂正も出来ない。
「でも、起きたら遼司が淋しがるから、本当に嫌じゃなかったら一緒に寝てやって」
嫌な訳は無いから、頷かざるを得ない。
それに、父親自らが良いと言うんだから、本当に構わないんだろう。
まあ知識が無けりゃ、男同士でエロい展開になるとも思わないだろうしな。
仕方なく…有り難く?ベッドに入ろうとすると、
「あっ、そうか」
聖一郎さんが思い出したようにそう呟いた。
「さっき、遼司が帰ってきたから話が途中で切れちゃったけど、斗織君、続き聞きたくて僕のことを待ってた?」
さっきの話───
こんな風に誰かを求めるのは、久し振りだからね───と話し始めた遼の話。
その為に待っていた訳ではなかったが、確かにその、気になる話し出しには引っ掛かりを覚えていた。
頷いて座り直すと、聖一郎さんも俺の正面にクッションを置いて、ゆっくりとそこに腰を下ろした。
「少しだけ、昔話を聞いてくれるかな」
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