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第94話 大切な場所

もっとして欲しくて腰を寄せると、斗織は俺の肩を押して離れようとする。 「っ……や…」 抱き着いて、口を尖らせてみせる。 「取り敢えず1回抜かせろ。ゴム替えっから」 「そのままでヘーキだからぁ」 「中で取れたり破れたりしたらキツイのはお前だぞ」 「…俺のこと心配してくれてんの?」 斗織は苦笑して、俺の頭をクシャッと撫でた。 「そ。だから、ちっと待ってろ」 「……はいっ」 引き抜かれると、膨らんだ部分が入口に引っかかって、きゅん、と孔が締まった。 やっぱり、大っきくなってなくても大っきい。 後ろから腰に抱き着いて、背中にキスをする。 …う~ん……、キスマークってどうやって付けるんだろ? ちゅーして、めいっぱい吸い付いたら朱く残る? あれって、鬱血だよねぇ。 目を閉じて、うちゅーーって思い切り吸って、目を開ける。 「あ……」 「あじゃねェよ、なんだよお前は」 呆れたみたいに、膝に抱え上げられた。 「とおるぅっ、キスマーク付いたぁ」 抱き着いて首筋にも痕を付けようとすると、ガバッと身体を引き剥がされる。 「付けんな!分かったから」 何が『分かった』のか、意味不明だ。 もっといっぱい付けたいのに…。 「うーーっ……」 「うーじゃねェ」 抱き上げられて、向かい合わせに膝に座らされた。 ゴムはもう装着済みみたい。着けてるとこ、また見てたかったなぁ…なんて。 斗織は俺の頭を引き寄せると、左胸の突起の上に俺の唇を触れさせた。 「そこなら見えないから痕付けてもいいぞ」 見上げると、首じゃ和装したら完全アウトだろーが、っておでこをコツンってされる。 胸に唇を寄せる。 トクン…トクン…って鼓動が伝わる。 心臓の音……。こんな大切な場所に印を付けさせてくれるなんて、さ…。 まるでぜんぶ、俺のものになってくれたって証…みたいじゃん……。 好きって気持ちが溢れて───ヤバい、泣きそうになる。 も~~~っ、この男はもーっ! 3ヶ月しか一緒にいられないのに、なんで俺のことこんなに幸せにさせちゃうんだよぉっ! 「ばか…」 聞こえないほどに小さく呟いて、言われた部分に口づける。 どくん、って、鼓動が少し大きくなった。

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