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第98話 俺のがエロい

『おはようございます。  昨晩は如何でしたか?』 さすが級長。朝の挨拶は忘れない。 爽やか。 ……じゃなくて。 やっぱり、ちゃんと伝えるべきだよね。 約束したし、それに分かち合って喜んでくれるのは、級長だけだし。 『今ベッドで、終わって、これからシャワーです。』 送信すると、すぐにまたピコリンと音がした。 『昨夜からですか!?  一体何時間繋がっていたんですか!!』 級長……興奮しすぎです…。 『違います。朝からです。』 『朝から!  それはなんと不健全な!』 『ちがうちがう!  昨夜は父さんがいたから!』 『今日はお父上はいらっしゃらないんですか?』 『お仕事です。』 『まさか息子が自分の仕事中に、男に犯されていようとは…』 おか…っ?! 『変な言い方しないでください!』 ピコリン、ピコリン、と何度も鳴るスマホに、顔を真っ赤に染めた俺に。 流石におかしく思ったんだろう。 「遼、聖一郎さん、なんだって?」 「えと…父さんじゃなくて、きぅちょう…」 「級長?」 首を傾げた斗織に、思い切ってスマホを差し出す。 俺と級長のやり取りを流し読んだ斗織は、みるみるその眉間に深い皺を寄せていった。 「遼……?」 ああ、顔が…怖い……。 「えと、きぅちょうには…筒抜けです。師匠…先生なので…」 「なんの先生だよ」 「いたっ」 叩かれた……。 「あのね、……きぅちょうは男同士の恋愛に理解のある腐男子って人だから、恋愛相談って言うか…、色々アドバイスくれたりするんだよっ。でねっ、俺が斗織とエッチなことしたいって思ったのもね、きぅちょうが本見せてくれたりして、そう言う世界もあるんだよって教えてくれたから」 「前…お前が変な誘惑仕掛けてきたのも、級長に本見せられたからつってたな」 「はっ、……その節は、どうも……」 もごもごと、口の中でごめんなさいを唱えると、ひとつ大きく息を吐きだした斗織が、フッと表情を緩めた。 不安になって見つめると、抱き寄せて、頭を優しく撫でてくれる。 「いや、俺もさ、級長には世話んなってる」 「え…?」 「俺にとっても級長は先生だから、同じか」 まあ、筒抜けに納得したわけじゃねェけどな、と冗談めかして言うと、斗織はスマホをベッドヘッドに置いて、今度こそ俺を抱き上げ床に下り立った。 「一人でマッパとか……エロ」 「自分だって着物肌蹴てんじゃんか~。そっちのがエロいもん」 「はいはい。俺のがエロいエロい」 「むぅ、なんだよそれぇっ」 「お前の尻穴見て興奮するぐらいだからな。俺のがエロいだろ?」 「うぅ……」 そう言って微笑まれると、なんにも言い返せなくなる。 ……って言うか、逆じゃん! 自分より相手の方がエロいぞ!って言い合いだったじゃん。 「…ばぁか」 頬を両手で包み込むと、その目が優しく細められた。 途端、俺の胸の中にも優しいものが流れ込んで……。 まるで吸い寄せられるみたいに俺は、目の前の愛しい男に唇を寄せたのだった。

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