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第99話 愛し合ってるか?
月曜日。今日から授業は4時間目で終了。
放課後俺は、斗織と自分のお弁当を持って、いつもの5人で保健室を訪れていた。
マナちゃん先生は一見して分かりやすくご機嫌だった。
俺たちの姿を見るなり、何をしに来たのか訊くでも無しに、
「よぉ!お前ら、愛し合ってるかー!?」
満面の笑みを浮かべて、ハイタッチを求めてきた。
動揺しながらタッチを返すと、満足そうに腕を組んで頷く。
「そうかそうか。人間幸せなのが一番だ」
そして窓からグラウンドを眩しそうに見つめて、
「やっぱり、愛に生きたいよな…。だって、男の子だもん☆」
下校していく生徒にも「よっ、お前ら付き合ってんの?幸せになっ!」と声を掛けた。
…ど、どうだろう……。今の2人、どっちも男の子だったけど…。
自分と斗織、先生と斗織のお兄さんとの例があるから、否定はできないけど。
「マナちゃん先生…?一也お兄さんと、その、いいカンジなんですか?」
他に理由は見当たらないし、訊ねてみる。
斗織は、はぁっ!?って眉根を寄せる。
訝しげな斗織の視線が自分に向いたことに気付くと、マナちゃん先生はニヤリと口角を持ち上げた。
「わかる? いやぁ、な~んで分かっちゃうかなぁ? 俺から色気っつーの?滲み出てるっつーの? もーっ、リョーくんてば、エ・ッ・チ」
ツン、と肩を突かれる。
マナちゃん先生、なんだか面白い…。
「一也お兄さん!?真中先生!その辺のところを詳しく!!」
早速嗅覚を働かせた級長が食い付いた。
「え?聞きたい? えー?でも生徒に恋愛話とか、教師として如何なものかなぁ? いや、しかし反対に教師として!生徒たちのこれからの為に、」
「話したいならさっさと話せ!」
満更でもない様子のマナちゃん先生に、斗織はイラッときたようで乱暴に先を急かす。
マナちゃん先生はにっこり微笑むと、斗織の頭をポンポンと優しく撫でた。
「今俺、お前のことすら愛しいわ。つか、お前らありがとな!」
俺まで纏めて回らない手で抱きしめられて、頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜられた。
「俺もですか?」
斗織だけならともかく、と訊ねる。
「そうそう。お前らが目の前でイッチャイチャベタベタすっからっさ、俺もそれやりたくなって、いっそ告ってフラれた方がマシかなぐらいなテンションになっちまって」
それからマナちゃん先生は自分と一也さん、2人の経緯 を語ってくれた。
出会いから、週末に起きたことまでをダイジェストで。
斗織は複雑な顔をして、黙って話を聴いていた。
リューガくんは一也さんとも面識があるようで、時々顔を赤らめながら脚をバタバタさせてた。
級長はそれはもう前のめりで、次いで中山も興味深そうに真剣に聴いていた。
俺は、先生良かったね、って思いながらも、斗織の反応が気になって仕方なかった。
斗織は、兄弟に男の恋人が出来たと知って、どんな思いでいるんだろうって。
斗織のお兄さんたちに俺も、その内 会うかもしれない。
斗織のことだからもしかしたら、俺のことを恋人だって紹介するかもしれない。
先週一也さんと会ったときは一瞬だったから、それに一也さんは優しい人っぽかったから、俺にも不快な気持ちを見せずに接してくれたのかもしれない。
次に会えばまた違う反応が返ってくるかもしれない。
それに、斗織にはもう一人、結婚してるって言う真ん中のお兄さんがいる。
育ってきた環境が同じものであれば、考え方も似通ったものになる可能性が大きいから。
だから俺は斗織を見つめて、斗織の発する言葉を待つ。
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