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第11話

◇◇◇  時折、的野の声が、窓の外から響いてくる。  雪史はそれを聞きながら、二階の自分の部屋でベッドの組み立てに四苦八苦していた。  通販で届いたシングルベッドとスチールラックは、ひとりで組み立てるには、だいぶ苦労しそうだった。  手元の説明書にも『ふたりで組み立て』と書いてある。  階下には、腕っ節の強そうな職人の声が行き交っていたが、さすがに手伝ってくださいとは言えない。  かといって園子に力仕事をさせる訳にもいかなくて、しかたなく雪史はひとりでベッドの部品と格闘することにした。  ベッドボード部分にあたる大きなフレームを抱えて、ボルトを手にする。  さてどうやってとめようかと思案していたら、部屋の扉がノックされた。  扉はあけっぱなしになっている。顔をあげれば、廊下から明るいブラウンの髪が半分、顔をだしていた。 「……」  うかがうように、ドア枠から、そっと二重の切れ長の瞳が現れる。  遠慮がちなその表情を見ていたら、先刻の恥ずかしさは消えてなくなった。 「……さっきは、ごめん」  落ちこんだ声で謝られる。けどよく考えたら、男同士なのだし、別に恥ずかしがることでもないのだ。気にするほうがおかしい。  雪史は的野に特別な感情があるにしても、的野からしてみれば、友達が風呂に入ってるところに間違えてきてしまっただけだ。しかも仕事で。  的野に非はない。お互い、タイミングが悪かっただけなのだ。 「謝る必要なんてないよ。こっちこそ、リフォーム入ってるって知らなくて。迷惑かけたよ」  ごめん、と答えれば、的野は部屋の入り口に立って所在なさそうな顔をした。  目を床に這わせて、ダンボールや梱包材が散らばったままの家具の部品を見やる。 「ひとりで組み立ててんの?」 「うん」 「こんなん、ひとりでやってたら大変やろ」 「うん……」  的野は発砲スチロールやナイロン袋をかきわけ、横までやってきた。  手を床につき、どれどれと説明書に目を通す。

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