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第13話
小学校の頃は、学校から帰ってから公園で、カードゲームやポータブルゲームを頭をくっつけるようにして仲良くプレイしたものだったけれど、中学に入ると的野は急に生活を崩し始めた。
髪を金髪に染めて、大人の言う事を聞かなくなり、学校をサボって夜中に出歩くようになった。
喧嘩沙汰に巻きこまれたことも何度かあったらしい。
伝聞でしか知ることができなかったのは、その頃ちょうど、雪史のほうも家庭が大きく変化していたからだ。
雪史も自分のことで精一杯で、的野がなぜそんなふうに変わっていってしまったのか、本人にきく機会もなく、やがては転校の日を迎えてしまった。
引っ越しを数日後にひかえたある日、夜遅く、雪史はひとりでコンビニに買い物にでたことがある。
梅雨にむかう六月の夜、人気のない夜道をひたひたと走っていくと、道路わきの植えこみに腰をおろしている人影を見つけた。
誰なのかと、恐る恐る、離れた場所から確認してみれば、それは頬に大きなあざをつけた的野だった。
的野はぼんやりと闇を見つめながら、ひとりで缶のブラックコーヒーを飲んでいた。
その、寂しげな横顔に、雪史は声をかけることもできずに立ち竦んだ。
的野が変わってしまった理由はなんなのだろう。どうして、こんなに荒んでしまったのだろう。
訳は知ることなく、数日後には転校した。
だから雪史はずっと、彼のことが気にかかっていたのだった。
「ほいできあがり」
スチールラックも楽々と組み立てると、腰に手をあてて満足げに見あげた。
「ありがとう。助かったよ」
「これぐらい。いつでも言ってくれたら手伝うから」
そこにちょうど、一階から現場監督が的野を呼ぶ声が聞こえてくる。
「やべ、戻らないと」
大量の梱包材とゴミを手際よくまとめると、的野は「またな」と言って部屋をでていった。
「あ、そうだ。地元に残ってる奴らに、加佐井が戻ってきたこと知らせといたから。今度、みんなでメシでも食いにいこ」
廊下で振り返り、ついでのようにつけ足して笑う。
えくぼを刻んだ笑顔が、小学生の頃と変わっていなくて、雪史は安堵しながら頷いた。
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