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第16話 友人

◇◇◇  その日の夕方、こたつに入って本を読んでいたら、夕食の準備をしていた園子に呼ばれた。 「雪ちゃん、みりんを切らしちゃったから、ちょっと買い物にいってきてくれる?」 「ああ、うん、いいよ」 「山口さんとこ、酒屋がコンビニになったんだけど、そこがいちばん近いから」 「わかった」  自分もちょうど身体がなまっていたところだったから、運動がてらでかけることにした。  五年前とは雰囲気をすこし変えた街なみを、なつかしくぶらぶらと散歩しながら、目的の店をさがす。  以前は酒屋だった店がきれいになって、入り口に全国チェーンの有名なマークがついていた。  こんなんになったんだと、あたりを見回しながら店に入る。  棚からみりんを一本手に取って、あとは自分用のジュースとボトル入りのガムをかごに入れた。  レジには若い女の子がひとりいた。ピッ、ピッと精算をしてもらっている後ろの扉から、コンビニの制服姿の青年がひとりあらわれる。 「あれっ? およっ? え、――加佐井?」  いきなり引っくり返った声で、名前を呼ばれた。こちらも驚いて、相手を見返した。 「おおっ。やっぱ、加佐井やん。なんやー、戻ってきたってのは、本当やったんや」  それに、レジの女の子も、「え? まじ?」と目を見ひらいてきた。 「あ、ほんとだ。うっわーなつかし。加佐井くんだ」  いきなり見知らぬふたりから話しかけられて、え? ええ? と戸惑っていたら、「あ。まじ加佐井やー。リアクションが変わってねえー」と笑われる。 「ねね、あたしらのこと、覚えてる?」 「俺、冬次や。山口冬次(やまぐちとうじ)。こっちは亜佐実(あさみ)や。同級生の。覚えとらん?」  冬次のことは覚えている。確か、ここ酒屋の息子だったはずだ。小学校の時、的野と三人で遊んだこともあった。  亜佐実のほうは、なんとなく見覚えだけはあった。 「的野から、帰ってきとるとは聞いてたけど。いやほんま。帰ってきとったんや。なつかしいなあ」  しみじみ見つめられて、ちょっと恥ずかしくなる。 「何? なんでまたこっち戻ってきたん?」  袋詰めした商品を手渡しながら、亜佐実が色々ときいてきた。  それにひとつずつ丁寧に答えていたら、また「加佐井くんかわいー。真面目なまんまで、変わってないー」と笑われた。

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