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第17話

「杉山さんちがばあちゃんちだったんだって?」 「うんそう」 「大学こっちで通うんだったら、また昔みたいに遊べるな」 「みんなで集まろー。加佐井くん帰って来たって知ったら、みんな喜ぶよ」  ふたりから歓迎されて、まだ自分がこの地で忘れ去られていなかったことに嬉しくなる。  袋を手に、自然と笑みがこぼれた。  冬次が店の外まで見送りにきて、地元に残っている友人らの名前を教えてくれる。  今度集まろうぜと誘われて、変わらぬ親しさに笑顔でうなずいた。 「的野が、加佐井のばあちゃんちの工事に入っとるやろ」 「うん」 「あいつと、なんか話した?」 「あ、いや。まだそんなには」 「そか」  冬次がポケットに手をつっこんで、寒さに震える。  雪史はコートを着ていたが、冬次は薄着の制服のままだった。 「あいつ、ちょっと変わったやろ」 「――え?」  何のことかと、隣を見あげると、意味ありげに笑いかけられた。  訳がわからずきょとんとした表情になる。 「加佐井は根が純粋そうやからなあ。あいつに近づけるのは心配やな」  冬次は雪史を見定めるような目つきになった。 「あいつ、昔と……小学校の頃とは、ちょっと変わったからさ」 「……」 「よう見ときや」  不可解な言葉を投げて、んじゃ、と手をあげ店の中へと戻っていく。  残された雪史は、言われた内容がよくわからなくて、ぼんやりと冬次の後姿を見送った。  夕暮れ時の、冷たい風がコートの裾を吹き抜けていく。 「……的野が、ちょっと、変わった?」  独り言のように呟きながら、雪史はしばらく、コンビニの前で考えこんだ。

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