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第18話

◇◇◇  冬次の言葉は気にかかったが、それを的野にたずねてみるようなことは、雪史にはできなかった。  的野がこの前、縁側で自分のことを突き放すように言い捨てたことも引っかかっていたからだ。  雪史がここを離れていた五年の間に、友達関係は変わってしまったのだろうか。  数日後、雪史は的野から友人たちの集まりに誘われた。  商店街の一角にあるお好み焼き屋に皆が集まってるらしいから、加佐井も一緒に行こうと仕事おわりの的野に声をかけられたのだ。  的野とでかけられるのは嬉しかったから、雪史は行くと返事をした。  まちあわせ場所で落ちあって、ふたりで暗くなった商店街を、小さな店まで歩いていく。チェーン店ではない、個人経営のお好み焼き屋だった。 「こんばんわー」  ガラガラと手動の扉をあける。香ばしい匂いにあふれた店内は、客で埋まっていた。  「いらっしゃいー」という親父の威勢のいい声に「おー、きたきた」「こっちこっち」という若い声がいくつもかぶる。  カウンターと座敷席がある店を奥へ進めば、男女あわせて六人の集団が座敷席でくつろいでいた。 「きたー、加佐井くんだー、久しぶりぃ」 「おー、ホントに加佐井だ。相変わらず童顔だなおまえ」  ずいぶん場はできあがっているらしい。  雪史は誰が誰だか思い出そうとして、目を泳がせた。  冬次を含めた男子三人はなんとなく見覚えがあるが、女子三人は全く記憶にない。かろうじて、亜佐実だけが判別できた。  とにかく座れ座れとうながされて、スニーカーを脱いであがりこむ。あいた席へと通されれば、知らない女の子に両側から挟まれてしまった。  的野が雪史の対面に腰をおろす。  大丈夫? というように視線を送られて、口元がすこし引きつった。  実は女の子は苦手だった。口下手なせいで、話がちゃんとかみあったためしがないのだ。  それでも飲み物をすすめられて、色々と話題をふられれば、なんとか昔の仲間意識が思い出されて、うまく輪の中に溶けこめてくる。  的野が時々、気を使ってか、話をさらっていってくれることにも助けられた。 「加佐井くんってさ、昔も今も、話ふられると一瞬、ぴくって子犬みたいに反応するよね」 「えっ。そ、そう?」  瞬きしながら肩をすくめると、それよそれ、とはやし立てられる。

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