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第21話
「……」
その陽気さにあてられて、思わず目をそらしてしまう。
さっきの亜佐実との仲のよさが脳裏をよぎり、胸に複雑なものがこみあげてきた。
「楽しかった?」
雪史の心情も知らずに、的野が感想を求めるようにたずねてくる。
誘ったのは的野からだったので、ちゃんと楽しめたのかどうか心配だったようだ。
それに気づけば、今の自分の態度はよくないと思えた。
「うん。楽しかった」
相手の目を見て、笑顔を作って答える。的野も安心したように白い息を大きくついた。
「あのメンツで、よく集まるんよ。今度また機会があったら、加佐井も誘うからさ」
「うん」
「夏は海行ったりとか、バーベキューとかもしたりするから」
「へええ」
きっと盛りあがるんだろうな、と店でのやり取りを思い出しながらうなずいた。
子供の頃からずっと一緒で、大人になっても遊べる間柄でいられるのは、なかなか難しいことなのに。的野のまわりにはそんな友人が沢山いるんだ。
冬次のことは気になったけれど、遠慮のない友人だからささいな行き違いでもあっただけなんだろう。男同士、口の悪い友達だっている。
自分も、そんな仲のよいひとりに加えてもらえるのかな、と期待すれば嬉しさがこみあげる。
これからもここで、的野の友人として一緒に遊んでいけるんだろうか。
たとえ、的野に恋人がいたとしても。
奇妙な胸の疼きにこらえきれなくなって、「えへへ」と意味なく笑ってみせれば、的野が目を見ひらいた。
「なに? 皆で遊べるのがそんなに嬉しいの?」
「え」
「めっちゃ嬉しそうやんか」
「そ、そかな」
頬が赤いのは、火照った頭のせいか、それとも身を切るような寒風のせいなのか。
「……ここに、帰ってこれてよかって、って思ってるから」
言葉が自然にこぼれでた。発熱したような、体内の高い熱を放つように。
的野は雪史の家庭事情を少しは知っているだろうから、それに思い至ったのかもしれない。
「そか」と、短く返事をしたあと、視線を道路に落として、同じように「へへ」と笑った。
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