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第31話
羨ましくて、切なくて、――雪史はその場から動けなくなった。
どんなに仲良くでかけたとしても、しょせんは男友達だ。恋人にはなれない。
好きになったって、報われることはないんだな、と改めて痛感する。
自分の気持ちが異端なのは十分承知している。だから、届かなくて当然なのだとも。
ふと、ひと気を感じて視線を向けた。
コンビニの入り口に、バイトの制服姿の男が立っている。
帰っていくふたりを、雪史と同じように見つめていたのは冬次だった。
冬次は、うつろな目で亜佐実の後姿を追っていた。
的野が亜佐実に話しかけると、ギッと唇を引き結ぶ。しばらくすると、瞳を地面に落として何もないアスファルトを強く蹴った。
伏せた顔は悲しみでゆがんでいる。
もういちど顔をあげると、やるせなさに押しつぶされた表情で、消えていくふたつの影をにらんだ。
――ああ、そうだったんだ。
雪史は声もかけられず、そっと後じさりしてコンビニの前から離れた。
冬次は亜佐実のことが好きだったんだ。
だから、ふたりの仲をうらやんで亜佐実の彼氏である的野に、あんなトゲのある態度を示していたのだ。
昔から仲のいい友達だったのに。
けれど友達だからこそ、恋愛が絡めば関係は複雑になるのかもしれない。
そうして、今の自分もたぶん、冬次と同じ顔をしている。
ふたりの仲のよさに嫉妬している。やるせなくて悲しくて、ゆがんだ顔をさらしている。
自分は亜佐実のようにはなれない。的野と腕をくんで歩くことなんで、きっと、一生、無理だ。
わかりきった現実を改めてつきつけられて、雪史はうなだれたまま、ひとり家路を急いだ。
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