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第38話 対峙
◇◇◇
それから数日後、雪史が大学から帰宅して部屋にいたとき、的野からのメッセージが届いた。
『今日これから、亜佐実と話をすることになった。亜佐実のバイトがもうすぐ終わるから、そしたらふたりで会う』
心臓がドキンと跳ねた。
『話が終わったら、ユキに会いたい』
続けて送られてきたメッセージに、スマホを持った指先からしびれがきた。緊張に、思わず天井を見あげる。
どう返事をしたらいいのかわからなくて、『わかった』とだけ送信する。
部屋の中をうろうろと歩き回り、落ち着かなくなって、コートをはおると園子にでかけてくると言い残して外へ飛びだした。
けれど行き先なんて決めてない。ふたりはどこで会うんだろう。カフェか、それとも的野の車ででかけるのか。
ふたりが会う場所を探すわけにもいかなくて、雪史はあてどもなく商店街をうろうろと歩きまわった。
どこかで時間をつぶさないと。次の的野からのメッセージが送られてくるまで。
本屋にでも行こうかと考えて、来た道をひきかえす。
陽が沈み、蒼さの増した夕暮れの通りを気もそぞろに歩き続けた。
そのとき、通りの向こう側を走り抜けていく、見覚えのある人影を視界の端にとらえた。
ハッと顔を向ければ、それはコンビニの制服を着たままの亜佐実の姿だった。
何かに急かされるようにして、あわてて駆けていく。
雪史は驚いて立ち止まった。
亜佐実はあっという間に、角を曲がって見えなくなった。
――彼女は的野と会う予定じゃなかったのか。何か別の用事でも入ったのか。
呆然としたまま、亜佐実の消えた通りを眺めていたら、もうひとり、大またで闊歩する制服姿の人物が現れた。
冬次だった。
顔が強張っている。遠目にもその表情が尋常じゃないことがわかった。
雪史は車が流れる隙間をぬって、通りを反対側へと渡った。
歩き去る冬次の後ろから、そっとあとをつける。
なんだか嫌な予感がした。
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