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第51話

 助手席に戻った雪史は、スマホを取りだし、園子に「今日は友達の家に泊まるから」と電話をした。  通話を終えて、ポケットにスマホをしまうと、運転席の的野がからかう様に言ってきた。 「なんか、女子高生とかが、親に外泊の言い訳してるみたいだったな」  ニッと歯をみせて、エンジンをかける。雪史は恥ずかしくなって言い返した。 「的野はお母さんに連絡しなくていいの?」  その言葉に、軽くいなすように答えてくる。 「俺はオトコだから。親に連絡なんていれなくていーの」  さらりと言ってハンドルをまわす。  けれど、その台詞に、雪史は的野が自分をどんなふうに扱いたいのかを、察知した。  的野は、雪史を女の子のように扱いたがっているのだ。これから先の時間を、自分がリードしていきたいんだと、暗に頼んできている。  そういうことなのだと理解した雪史は、黙ってそれ以上は言葉をはさまずにおいた。  的野がそうしたいのなら、自分はそれでいい。的野が主導して、自分は受身でついていくのでも、ぜんぜん構わなかったし、むしろそれでいいとさえ思えた。 「そういやさ、以前、俺んちにユキが来たとき、俺の母さん、ちょっとヘンだったと思わんかった?」 「え?」 「ラーメン食べに行こって誘って、車とりに行ったとき。母さん、よそよそしくなかった?」 「ああ……」  言われてみれば、そうだったかもしれない。あの時、雪史は丁寧に対応されて、家にあがってとすすめられもした。 「あれさあ、絶対、ユキのこと、俺の好きな相手か、恋人とかと勘違いしたんだと思う」 「……そ、んな」  まあ、はずれてはなかったんだけどな、と的野は小さく笑って言った。 「ふたりっきりになれるところに、行こう」  広い国道にでると、的野は車を飛ばした。

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