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第10話

 抜けていく巻田に、尻を震わせた。 「お疲れさん」 「……うーっす……」  なんなんだ、この状況は。  放り出された尻が、ジンジンヒクヒク、肌はピリピリ。非常に辛い。 「課長……俺のケツに、穴が……」 「寝りゃ治るよ」  そりゃよかった。  ————カシャ。  小さなシャッター音に、猿崎は首を上げた。シーツから見上げる先の、崩れた浴衣でチンコ丸出しの中年が手にしているのは、タブレットだった。 「……なに撮ったんすか?」 「ん」  差し出された液晶には、半脱げの浴衣を腰に留めた尻丸出しのイケメンアラサー男が、蕩けた赤い顔で伸びている。 「うわー……。エロいなー、俺」 「しゃべるなよ猿崎。黙ってりゃそのうち消すから」 「……あー」  そういうことか。 「言わないっすよ……。上司にケツ掘られてアヘッたとか、誰に言うって……課長こそ、それ脅迫に使うとか」 「そんな面倒なことするかよ、忘れとけ、猿崎。入れる穴間違えただけだ、夢だ夢」 「最悪の言い訳っすね」  タブレットを荷物に突っ込み、巻田は自分用の綺麗なベッドに潜り込んで、さっさと電気を消した。 「明日寝坊すんなよ」 「すげえ、鬼畜の所業」 「素直すぎなんだよ、おまえはさ」  レイプ魔に同情された。しかし言い返す頭がない。  猿崎は疲れた体で暗闇に安らぎ、もういいやと毛布を引っ張り、目を閉じた。  とんだ突発事故だ。  朝一でシャワー浴びて、忘れよう。そうしよう————。

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