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第2話
「大丈夫ですって」
「遠慮なさらず。タクシーに乗ってください。送りますから、ね?」
「いえ、本当に一人で帰れます」
路上でこんな押し問答をかれこれ10分ほど繰り返している。
高級クラブまではいいとしよう。
ただただ綺麗なお姉さんとお話するだけで良かったし?
いや、その最中ですらセクハラとも言える行為を周りにバレないように振り払う労力は要した。やっと耐えたと思って部下たちを解散させ、さあもう疲れたさっさと帰って何も考えずに寝てしまおうと思っていたのに!!
「酔っていらっしゃるようですし、私はこの通りザルですので」
元気が良さそうに腕を振って見せるコイツに苛立ちを隠せない。
(僕だって酔ってませんが!?どこに目ぇつけてんだよクソジジイ!!)
ここでこのセクハラジジイの言う通りにタクシーに乗ってしまえば、どうなるかわかったもんじゃない!
「あ、ご気分悪いのでしたらこの近くで休憩のほうがいいですかね?」
そう言って腕をがっちり掴まれた。
いけしゃあしゃあと!!何言ってくれてんの?!
ここらで休憩なんてラブホしかねえっての!!あからさますぎんだろ!!!
「はあ?!?!」
あ、もうこれキレてもいいかもしんない。短かったなあ、僕の部長人生。特別思入れがあるわけじゃないけれど、一応全身全霊で業務に全うしてたんです。くっそ、とりあえず一発殴らないと気が済まない。
腹に一発、と拳を握ろうとしたとき。
背後から肩をトントンと叩かれた。
「やっほー、ケンジさん」
只今午前3時。
こんなに時間に間の抜けた挨拶をしてくる男を、僕は一人しか知らない。
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