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第5話

カーテンから洩れる日の光に、もう明け方近いことを知る。 この歳で徹夜だなんて、明日はもう一日寝てゴロゴロして終了だな。 「生徒と教師がイケナイ事、やってるみたいじゃない?」 ニヤニヤ笑うアキくんと同じ事を考えてしまっていた僕は視線を外して目を伏せる。 「エッチなこと、しましょ。せーんせ、」 早々にジャケットを脱がされネクタイを外されて、ボタンに手を掛けている彼を見上げる。 「ばかじゃねえの……」 「もう!ノリが悪いんだからー」 楽しそうなアキくんに、僕も何かしないといけないだろうか。とりあえずだらしなく着こなしている制服の間から手を入れて横腹をなぞってみる。 「やる気になった?」 「生徒と先生ごっこ?」 素肌を指で撫でられる。擽ったいけど、気持ちがいい。 「んっ」 「せんせ、声出したら気づかれちゃうよ」 え、そんな設定作っちゃうの? そういうのは苦手だなあ。 肩をするりと撫でられて、袖から腕を出せば直に触れるひんやりとしたシーツが僕を包んで彼は僕の横に転がった。 「俺はそういうのがあった方が好き」 「なんで?」 「俺じゃない何者かになれるじゃん?」 アキくんの掌が僕の頬を包む。 「アキくんは、アキくんじゃない誰かになりたいの?」 「そうだよ、俺は俺じゃない誰かになりたいんだ」 だからね、こういう仕事を続けているんだよ。 そう言って笑うアキくんは悪戯っ子のように肩を竦めた。 本当に高校生みたいに幼い、屈託の無いその笑みに何故かひどく惹き付けられる。 「ねえ先生、俺とイイ事しよ」 耳元で囁かれて逃げられない。 いい大人同士がこんなごっこ遊び、馬鹿馬鹿しくてやってられない。 そう思うけど、アキくんは本格的に生徒と先生ごっこをするつもりだ。 「うんと気持ち良くしてあげるから……ね?」 指を絡められて、じっと見つめられて。 すごく眩しくて直視出来ない。 「……優しくして」 「ちゃんと優しくしてあげる」 「あんまり無理な体勢はちょっと、」 「腰が痛いんだっけ?おじいちゃんじゃん」 「あと体硬いから、」 「わかったわかった」 おざなりな返答に不安は募る。 それでも彼の体温は温かい。

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