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第3話
「あ————あ…………っ」
「ん……くっ…………」
福田は、アナルマッサージが上手かった。それから、吐息がいやらしい。
木野はトロトロに蕩かされた体で枕を抱いて尻を差し出し、ゆっくりと犯される衝撃に、頭の芯を飛ばして喘ぎ続けた。
* * *
「木野くん、大丈夫だった?」
「はい」
大丈夫もなにも、思い出すだけで体がおかしくなる。
羞恥と悦楽で、すっかり痺れた尻の事後処理まで福田にさせてしまった。福田の指は死ぬほど気持ち良く、木野は頭と顔と尻から火を吹き、何度も勃起した。そうして、この日のことは絶対に忘れないぞと心に誓った。この記憶だけできっと、一生抜ける。
隣のベッドでは、セクシーな中年がバスローブで黒髪を乾かしている。木野は毛布を掛けられた体を丸め、ドキドキして治まらない股間を隠した。
もう駄目だ。
木野は白旗を振り、枕に顔を埋めた。
電気消すよと言われ、はいと答えた。
* * *
別々のベッドで悶々と眠った木野は早朝、支度を終えた福田に起こされ、飛び上がった。
「それじゃあ」
「ま、ま、待ってぐしゃあ!」
「えっ」
ベッドから転げ落ちた。痛みは感じなかった。木野は顔面を打ったまま平伏する下僕スタイルで「連絡先教えてください!」と床に叫んだ。
「こういう知り合いいないんですよ! こういうの、相談とかできるひと、福田さんだけなんです! 迷惑かけないようにしますからぁ!」
素っ裸で震える貧相な下僕に、面食らった様子で沈黙が落ちた。
「…………どうかな。オレ、会社のスマホしか持ってないんだけど」
「えっ」
カジュアルなビジネスバッグからスマホを取り出す福田に、木野は顔を上げた四つ足で飛び上がって、自分の鞄をあわあわと探した。
「ははっ!」
軽やかな笑いを尻で聞いた。なんだか若いそれに、可愛いなと胸をときめかせた顔の横を、長い足が過ぎっていった。
「こっちだ」
「……! すいません!」
地味な黒のナイロンバッグを渡され、安いファスナーを抉じ開けた。
「番号は……どうだったかな」
木野は正座で取り出したスマホを操作し、告げられたナンバーを真剣に登録して、福田の手の中のそれを鳴らした。
繋がった!
よくわからない感動で興奮した股間は無視で、スマホを弄る福田の真面目な眼差しを、熱の上がった顔で見上げた。
「暇ができたら、また飲みに行こうか。オレで良ければ付き合うよ」
「はっ、はい! ぼくはっ! 福田さんがいいです!」
勃起の正座で言い切った、裸の二七歳に、福田は可笑しそうに深い目尻のシワを緩め、じゃあまた、と手をふって立ち去った。
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