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第4話

 福田にホテル代を払わせてしまった。  更に居酒屋の支払いの記憶がないことにも、木野は頭を抱えた。  自宅に帰る時間はなく、シャワーを浴びて店に戻った。フェアの準備と朝一の接客を終え、手が空いた隙に福田にメールを送った。礼と謝罪と、出来れば今晩にでも食事を奢らせて欲しいと書き、ジンジンと疼く尻にそうじゃないだろと一人で真っ赤になった。  福田との逢瀬は、週に一、二度の頻度で続いた。  誘いを断られることは滅多になく、適当にあしらわれる覚悟でいた木野はすっかり舞い上がった。  ベッドに入っても、福田がその気にならないことはけっこうあった。勃たないときは指で相手をし、会えば興奮が治まらない木野に、福田は根気強く付き合ってくれた。自分ばかり濡れて乱れて、恥ずかしいやら申し訳ないやら、すいませんと謝る喘ぎにも「楽しいよ」と笑って返され、心の全てで白旗を振った。  福田が、好きだ。ものすごく好きだ。  何度も口から出かかる言葉を、木野は必死に誤魔化し、飲み込み続けた。  スマートで大人で、穏やかで優しい福田は、キスの気配を巧みに避けた。  正常位も、したことがなかった。

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